ふたつのスピカ / 柳沼行

高校生が読んでいて、それをまた小学生の弟が読んでいて、わたしが「それ面白いの?」と聞いて、「面白いよ」というから、読み始めた。

主人公鴨川アスミは、東京宇宙学校の宇宙飛行士コースに2024年度入学する。アスミは星が大好きで、ロケットの「運転手」になって宇宙に行くことが夢だ。

2024年度ってくらいだから、このお話はSFなのだ。

未来でSFで宇宙なのに、作者の絵柄はちっとも未来っぽくない。

今の漫画家は仕事にパソコンを使うのが当たり前かと思っていたが、柳沼氏の場合どう見ても使っていない。そればかりか、エアブラシを使っている気配もない。

漆黒の宇宙に星屑が広がる絵は、油カスすくいの網に歯ブラシでホワイトをはじいたような、初期の石ノ森章太郎が使っていたような技法で、しかもあまり上手くない。

ロケットや、未来技術の結晶であるはずのさまざまな機械類も、メタリックな感じがしない。

人物も風景もどんくさい。

なのにこの絵が、すごく未来な感じがする。

未来って流線型じゃないんだ、デコボコしているんだ、スマートじゃないんだ、ださいんだ。

と思ったら、未来っていいなと思えてきた。

いつも新しいものを追いかけて、息が切れかけているから、すごく嬉しくなった。

注文があるとすれば、ちょっと人情話に傾きすぎて(それがまたいいんだけど)、泣かせてばかりだから、宇宙飛行士コースの特訓をもって描いてほしい。

アスミの夢がどんな風にかなうのか、早く続きが読みたい。

発行:メディアファクトリー 初出:コミックフラッパー
初版:1巻 2002/01/31 2巻 2002/04/20 3巻 2002/11/30 4巻 2003/05/31

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投稿者 hajime