Netflixオリジナル映画『愛なき森で叫べ』
監督・脚本:園子温
出演:椎名桔平、満島真之介、日南響子、鎌滝えり、YOUNG DAIS、長谷川大 / 真飛聖、でんでん
プロデューサー:武藤大司
撮影:谷川創平
美術:松塚隆史
照明:李家俊理

なんてことでしょうね。またまたこんな映画を撮ってしまって。インスパイアされたのは北九州監禁殺人事件 – Wikipediaとのことで、今そのWikipedia読んだんだけど(今までそんな事件知らなかった)、ちょっとこんな酷い事件って存在しうるの? という「事実は小説より奇なり」どこじゃない実話。

でも思ったけど、インスパイアされたのは、死体処理とか「通電」とか誰彼かまわず肉体関係にもつれこむXの性質までであって、本編の女性達は作品のオリジナルのように思った。

こんな感じに、↑↑わざとらしい清純ぶりっ子として描写される1985年の女子高校生。

ちなみに1985年はぶりっ子元祖の松田聖子が郷ひろみとの交際を破局させ、早ワザで神田正輝と結婚した、さりげに衝撃の年。作中のレトロ感漂うキーワード「やりまん」が、今思えば彼女を冠するのにふさわしい言葉だと分かる。おそらく若き日の園子温も松田聖子を神聖視していたのだろう(直感)。郷ひろみとの恋が成就し結婚、という成り行きならばまだ我慢できたものが、直後の神田○輝(とゆー石原軍団の、イケメンというにはあまりに中途半端な容貌の)役者(なのかどうかすらよくわからん)っぽい人と結婚とは、納得いかない。そのトラウマを引きずる園子温 青年なのだった。

実はわたしも最初のうちは女子高校生達ーーおもに、美津子、妙子、エイコーーを「何をやってんだろう? は? ロミオとジュリエットだ? そんな劇やるかなぁ?」と内心疑問に思いながら見ていた。映画コムのユーザーレビュー見ると、けっこう不評だったこともあり、面白くなかったら途中でやめるつもりでNetflixにログインした。

結局最後までみてしまった。

何がみさせたのかはよく分からない。

今、見終わって3日くらい経過してる。今もまだ心に強く残っているのは最後の美津子の叫びだ。いっしゅのどんでん返しであり、いっしゅの伏線の回収場面でもある。そして思った。あの子(たち)のピュアさは少しも損なわれていなかったんだ、と。村田にいろんな事をやったりやらされたりしたのに。その前の入院中のシーンで「自分が一番悪いの」と美津子は妹に訴えてゲンナリされていたわけだけど、でもってわたしも「この人、もー、いつまでそんなこと言っているのよ」と内心かなり本気でイラッとしたのだけど。

その言葉の意味が明かされるシーンでもある。
そういえばわたしも小学校~中学校にかけての7年間、本当に大好きな友達がいたんだけど、その子は他の子とも仲良くするから嫉妬で狂いそうだった。タマというあだ名の子で、次々に楽しいことを思いつくから、一緒にいるだけでウキウキワクワク。ある時タマが「パン工場に見学に行こう!!」と言い出して、小学生女子ふたりで我孫子(だったか柏)にあったパン工場にアポなしで押しかけたり。

高校は別々になったからタマとは以来会っていない。あの7年間で嫉妬と独占欲というおそろしい感情を味わいつくしたと思う。もう二度と何が起きようともそんな感情を持つまいと決めて生きてきた。人間社会って嫉妬しあう者同士が参加するゲームみたいなところがあるから、わたしはどのゲームにも参加できない浮いている自分を感じて来たけど、それでも全然かまわなかった。

今気づいたんだけど、妙子が着ていた服、「やりまん服」だったんだ。「生き残ったらやりまんになるっ!!」と宣言したことを忠実に守っていたんだね。あの服の目くらまし効果で思考停止させられちゃったらしい、自分。見かけで判断して、過激な女、とばかり見ていた。

そんなでこの映画、美津子を演じる鎌滝えりと、妙子を演じる日南響子の、美の競演ならぬ汚の競演といったら悪いかな、どういえばいいか、虚飾をはぎ取った裸以上の裸、女でもない女の子でもない女子でもない人間の顔を見せてくれた。

そこへ行くと、男どもは印象に残りにくい。村田の「ちょこっとは好きだった?」ってなんだよ腹立つわー。「お前のことなんかちょこっとも好きじゃないワっ」と答えてくれるかと思いきや、美津子はあんな返事をしてしまって。美津子、最後までやさしすぎる。
ていうか、好きは好きだったんだよね、村田にもらった50円を心の支えにしていたんだし。←わからなくなってきた‥‥

せっかくNetflixなんだから、また見るかも。
一度見では気づかなかった何かを発見しそうだ。ちなみに、「ピュア」な場面でかかるBGMは、他の園映画でもかかっていたクラシック音楽なのは気づいた。ふざけているのか本気なのか、本心がつかめない音楽。

いつだって本心なんかつかめないのだけど。

投稿者 annaka21