IN PHYSICAL / Ken

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このアルバムを最初に聴いたとき思ったのは、L’Arc-en-cielの建築現場のようだということ。美しく華麗に完成する前の、むき出しの鉄骨、石ころだらけの地面、風に吹かれる高い足場。ずいぶんとKenによって骨格は作られていたんだなぁ。
その一方、全体に漂う孤独感、悲しみのトーンは、よくいう「メロウな」というのとも違って深く胸に刺さる。
中でも5. ETERNAL RESTは、カモメの鳴く海の音で始まり、「この海で誰か死んだ?」なんて思わせ、次にピアノ伴奏で長い物語の導入が語りのように歌われる。ついでギターが語りを復唱するように鳴ったかと思うと、とんでもなくドラマチックな盛り上がり。この盛り上がりにおける感動の嵐の吹き荒れには思わず一緒になってシャウトしていた。かと思うとまた静かになって、孤独の物語とギター、そしてもう一度盛り上がるという考え抜かれた構成。悲しくて泣きたくなるのになぜか嬉しくなるという高度な曲だ。この方は将来壮大なロックオペラみたいのを手がけるといいのじゃないかなー。すごいのが出来そうに思えてならないのだけど。次の曲6. Speedも傑作。
ギターが鳴ってドラムが鳴って、ピアノとともに悲しくなって。という出だしも聴かせるのに、一段声が高くなってフェーズを変えてまた聴かせる。複雑なホログラムのように同じ曲の違う想を多角的に聴かせるような曲。
7. Deeper
やや軽くなりながら、こちらも雄叫びする。よくこんなに上手に叫び声が出たなと感心する。華麗な間奏が混ざる。
8. Gimme Your Name
このアルバムは最初から最後まで、最近のCDによくあるコンピューターで全部作りこみましたーというあの感じがなく、ゴツゴツしたアナログ感がいっぱいなのだけど、中でもこの曲は男っぽくゴツゴツが合っている。ともかくかっこいい。実際アマゾンの解説を見ると、≪ドラマーには、JOE氏(44MAGNUM)、真矢氏、Toshi Nagai氏、長谷川浩二氏、村石雅行氏、湊雅史氏という凄腕が集結し、ベースはシングルに引き続きTAKASHI氏(BUG)が参加。≫というのだから、ドラムだけで6人? すごい本物志向というかこだわりを感じるアルバムとなっているのだ。
9. Relax Over
なまなましい告白調。自分という男を精一杯表現したようないたいたしい曲。
曲はものすごくいい感じだけど歌詞が聴いているとチョッとツライ
10. My Angel
アルバム中唯一陽気さのある曲。
陽気といっても底には憂いが漂っていて、底抜けの陽気さとは違う。細い希望の光が刺しているような。どこかギコチなさも混ざるギターが目の前で鳴っているようで、テクニック的なことは分からないが、「そうやって弾くんだあ」と感心するような曲。よく聴くと飽きない構成だと感じる曲。
11. Save me
全部英詩なのでよくわからないが、内面を吐露しているようだ。
why did you hide my way to home ?
It’s time to go back I need a break.
と、英詩の中にハイタンの名前を隠し絵のように入れたりして、萌えねらいでしょうか??とゆうか確かに本作品聴いていて、「どうしてハイドが歌っているんじゃないのか」と思ったことは思ったし、特にまさにこの曲Save meでそれを感じる。kenさんもものすごくがんばって歌っているけれど、やはりボーカリストとしての魅力には欠けている、と言ってしまえる。(少なくとも現段階では)
けど、もう仕方がないから、このままいくしかない。
他のボーカルをみつけてくる手もあるけど。
このアルバムは好きに作った感があるが、孤独な境遇に置かれた自分以外の人を意識したつくりにすればもっともっと良いものになるだろう。音楽としての意味がアップし、作り手として満たされ救われる。ような気がするので、これからも頑張ってほしいと強く思った。
7月13日追記
少し変更。speedの歌詞はやはりKenさんの方が似合っていると思ったので。
(けどこの手の追加はやっているとキリがないので、ここまでとします)