球体(byムック)によせて。
去年の四月にもムックのアルバムの感想を書いた。
その時に紹介したユマちゃんはあれから間もなく無事に退院。
「また具合悪くなったら戻ってきなね」と言っていたけれど、調子は崩れないようで、入院することなくすごしているようだ。
「良い時の調子を覚えている」という練習が実を結んだのだろうか? そうならいいなと思う。
なにせ、悪いときの調子は克明に体が記憶しているもので、これは聞いた話によると、外敵から身を守る本能が悪い時の記憶を強く学習するためだという。誰だったか野球選手もインタビューに答え、「ホームランを打った時の記憶は体からすぐに消えるのに、三振をくらったときの記憶はいつまでもはっきり覚えている」と言っていた。
なので、悪い記憶ばかりが思い出され、自分を悪い方に規定しがちになるけれど、練習によって克服し、よい時もあるということを刻み付ける。普通に話していたこと、穏やかに過ごしていたこと、ちゃんと話は通じていたこと、少しでも楽しかったこと、などなどを。
何かあったとき、悪い方の記憶ではなくよい時の記憶を取り出す。
普通にしていると悪い方ばかり思い出すので、練習あるのみ。
正式に病気の人ばかりではなくちょっと役にたつtipではなかろうか?
(わたしには役にたった)
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Kenプロデュースときいたけど、思っていたほどはKenを感じなかった。
まずスピードがKenソロに比べてめちゃ早い。Kenソロ1に対して1.2から1.6くらいある。
正直、わたしはKenスピードが性に合うので、こっちは早すぎて付いていけない感があったもののだんだん慣れた。最初聴いたときは、志恩のイメージが残っていたせいかピンと来なかったものの、数回聴いたら、志恩のような各曲のバラエティや派手さ、もしくは分かりやすいキャッチーさはさほどないものの、統一感がある。
ハードロックというのかヘビメタというのか、ジャンル用語は分からないけれども、ひとつの形があるのが感じられる。安定といえば安定かもしれない。ムックはボーカルにも魅力がある。お兄さんといった感じの男らしい声だ。お兄さんはその少女を守れるのか守れないのか自分に問うている。だから甘い声ではない。それに少女にその問いの意味は分からない。が、それでいいのだ。
11.hanabiのような一聴泣かせると思わせる曲でも、バンドの音の洪水の中に発展するあたりに気骨めいたもの、あるいは未来に向けての決意のようなものを感じる。打ち上げ花火と打ち明け話をひっかけているところも(韻を踏んでいるともいう)面白みがあり、悲しいエピソードではあっても表現的である。こんなちょっとはずした余裕が、意外と喜ばれることがある。苦しみはいくらみつめても苦しみでしかない可能性が高いから。
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というあたりを、ユマちゃんと話せればよかったのだけど、めでたいことだから。入院していないということは。