ぢしんニュース
携帯電話は、子供に万が一のことがあった場合、すぐさま連絡が受け取れるよういつもポケットに持っているものだ。
見ると、どういう用事だか知らないが家人からだった。
一体何の用だろう? 忙しいのになぁ、返信はできないからね、と思いつつ、仕事中だからおおっぴらに見るわけにはいかないので、机の下でコソコソ見た。
読むと、えええ??! と驚愕するようなことが書いてあった。
「新潟で車ごと生き埋めになっていた母子、生きてたよ!」
メールにはそう書いてあって、ほぼそのまま唐突にわたしは声に出して(しまって)いた。
一瞬シーンとし、その後、「よかったねぇ」という声と、「メールやってるの?」というたしなめるような声。幸い、前者の声の方が圧倒的にボリュームが高かったが。
しかししばらくして「三人とも助かったの?」と新たに聞かれ、でもそこまで詳しくはメールに書いてないし、家人に返信して聞き返すのはたしなめ派の神経を逆撫ですることになるしで、できなかった。
どうせ情報を寄越すなら、もっと詳しく正確に送ってくれればいいのに、まったくもう。どうしてそう中途半端なわけえ~?? としばし憤慨した。
それから30分ほどたった頃、副部長が息せき切ってやって来て、「あの新潟の親子助かったわよ!!」と言う。
わたしは「知ってますよ、そんなの。へへん」と威張りたかったけれど、携帯のことがばれるとやばいので黙っていた。他のスタッフもすでに知っているので、誰も特に返事をしなかった。さぞや副部長さん、「なんでもっと感動しないの? この人たち!」とガッカリしたことだろう。
さらに、副部長も詳しいことはよく知らないらしく、誰と誰が助かったのか? という疑問には返答できずに退散して行った。
家に帰ってすぐさまテレビを付けると、小さな男の子が、レスキュー隊員に大事そうにだっこされ、他の隊員の手から手へ渡されていた。男の子は首がしっかりしていて、目も開けているようだし、確かに生きているようだった。
けれど、お母さんと娘さんの方は依然救出はされず、生死も分っていなかった。
それでも、小さな子供が生きていた奇跡の、明るいニュースの力は強かった。