先週、わたしの働く病棟で唯一の男性スタッフである看護師のマエノさんが、そのずんぐりむっくりした手に何か持っているので、よくよく見たら、壊れたはずのデジカメだった。
わたしは、(え? なおったの? っていうか新品買わないで修理したの?)と内心驚きつつも、マエノさんにわざわざデジカメの話しをふることはしなかった。
もともとマエノさんは「楽な仕事」ばかりしたがる人で、たとえばデジカメ撮影とか、採血とか、サーふローともセーふレットとも言われる点滴用の留置針(プラスチック製)を入れる仕事ばかりに走る傾向が強い。
こういった仕事はいわば上半身限定のキレイな仕事であり、ヘタな人がやればなかなか成功しないけれど、うまい人がやれば簡単にいってしまうような仕事で、そういう仕事ばかりやりたがるのは、やっぱズルイと思う。
わたしはマエノさんのことはぜんぜんキライではないけれど、そういう人であるから、デジカメの話題など共有したいとは思わない。勝手にやってろと思っている。
でけっきょくやはり直ったらしくて、マエノさんは数枚の写真を撮って、プリントアウトもしてきて、
「あ、オレこれから**に行かなきゃならないんだけど、写真は撮っておいたからっ」
と、毎度のことながら爽やか系みたいな顔で去って行った。
まー今ひとつ釈然としないものもあるのだが、そういうマエノさんを攻撃しまくっている人は当然存在するし、自分が撮らずにすんだのは事実ありがたいことなので、いいかってことで「どれどれ」と写真を見ると、
「え? ホタテ?」
「それとも食虫花の一種?」
「それとも火星?」
どうしてあの男はああなんだろう? 画面いっぱいにひろがったジョクソウは、パッと花が咲いたようでもあり、海中の生き物のようにも見え、要するになんだかわからない。
縦横の長さが分るようにセンチメートルを書いたテープを貼るとかもしていないし、どっちが頭なんだか足なんだか左右も分らないので「これはなんでしょう?」という変なクイズみたい。
いったい何年間ジョクソウの写真撮っているのか? わたしもたくさん撮ったけど、間違いなくマエノさんの方が回数多い。この前までわたしが多かったのは、年末年始でマエノさんがいなかったからだ。
ほんとうにしょうがない