続・職場の非モテ男、前野さんについて

そりゃまぁ書いても書かなくてもどっちでもいいようなことなんだけど、乗りかかった舟なので、あの後のことを書こうと思う。

バレンタインデーの前日、わたしはスーパーで迷っていた。
常識的に考えればあんだけ物をもらっているのだから、前野さんに義理チョコをあげるべきだった。
けれどもとてつもなく気がすすまなかったわたしは、とりあえず、それらしいチョコを買っておいて、いざとなったら取り出そうと、優柔不断なことを思いついた。

なにせ前野さんには、「おれ、年上ぜんぜんオッケーーっすから。13歳年上までオッケー!!」と言われたことがあるわたしである。

何が13歳なのか意味不明もいいとこで、わたしは前野さんのせいぜい8歳程度しか年上ではない。いや、そんな事はどうでもいい。「年上ぜんぜんオッケーー」とあなたに言われて嬉しいとでも??

しかし角をたてたくない、ウルトラ平和主義のわたしであるから「ハハハ」と力なく笑い、そばにいた桑野さん(推定55歳)に「ねね桑野さん、前野さんって年上ぜんぜんオッケーらしいですよ」と振って「あたし結婚してるから」と即答されたのだった。

さて、バレンタインデーの当日、わたしが決めていたのはバレンタインのバの字も口にすまい、ということだった。「そんな風習あたし知らない」って顔で押し通すつもりだった。その日ちょうどサヤちゃんも日勤でいたが、サヤちゃんも同じくバの字も出さなかった。もともとサヤちゃんは相手が誰であれ義理チョコなど渡す性格ではない。というか、かわいい子は普段の存在自体が義理チョコみたいなものなので、わざわざ行為としてする必要がないのである。

そんなで前野さんをそれとなく避けていたのであるが、こともあろうに、前野さんは自分から「今日バレンタインデーだなぁ」と言い出した。

え? と思い何か返事をしようと前野さんの方を見ると、前野さんの顔がものすごく大きかった。
もともと太り気味なので顔も大きいのだが、3日見ない間にひと周り太って、顔がさらにぷっくらと膨らんでいたのである!

驚きのあまり、返事が出てこなかった。
まして、あの苺菓子の詰め合わせを6袋ひとりで全部喰ったんだろうか? と思うと怖くて。

これで耳と鼻から苺の赤がだらーーと垂れてでて、顔中に苺の種がブツブツ吹いたら怪奇苺菓子男

うわーー…

「え? え? あらーいい天気。そろそろ春かしらーー? あははあははあはは」

わたしは、スキップしつつその場を去っていくしかなかった。

 

心優しき読者諸姉諸兄へうれしいお知らせ
主任が前野さんの結婚相手にって、お見合い相手をみつけてきました。
年齢は40なんぼだそうです。
本人は「40なんぼでもぜんぜんオッケー」と言っていますが、さらに上司のふくぶちょうが「だめだめ。前野さんだって子供ほしいでしょう? だめよ40なんぼは」と反対しています。
あたしはぶっちゃけ「子供なんかこの際どうでもいいから」と思いました

 

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