プラネット・アース / プリンス

prince.jpg最近聴くCDがなくなったため、戸棚から2006年リリースの『3121』を引っ張り出して聴いた。
プリンスの『3121』については旧日々のsukima(hatenaダイアリ)でも何か書いたが、CD自体とはあまり関係のない与太話に終始した記憶がある。プリンスの華やかな過去の栄光と比べるつもりはなくても、やはり比べて地味な印象を受けたからかと思う。
ところがどっこい、今回聴いたら「3121ってこんなに良かったっけ!!」と、マジ驚愕していた。
全曲がいいのだが、特に9曲目「ザ・ワード」から「ビューティフル、ラヴド・アンド・ブレスド」「ザ・ダンス」は、悩殺されて死ぬかと思った。それで急遽『3121』の次に出ているCDはないかと探したところ、翌年2007年3月に『プラネット・アース』、今年2008年には『Indigo Nights』(2008年 – ライヴアルバム : 写真集 “21 Nights” に付属)が出ている模様だった。とりあえずライブアルバムは置いておいて、『プラネット・アース』だ。しかしこのデッカク出たタイトル、「ついていけるのか自分??」とちょっと不安になったものの、それどころではない。
ということで昨日購入、聴いたところ、まさかこんなにプリンスに癒されるとは…
せっかくだから、一曲一曲コメントしてみよう。


1. Planet Earth
一曲目であるから、昔だったら、ターンテーブルに針を落としてじっと息を殺したところ。鳴るまでの予想では最初の音は、叩く音、激しい音だろうと。ところが全然違って、ピアノの音がこぼれるようにポロンポロンと鳴り出して意外だった。
これはなんというか短調とも長調ともつかない、重いとも軽いともつかない曲調。かと思うと軽快で明るくなり、かと思うと風や雨が激しくなって紆余曲折。変化に富み、そのどの部分も耳を惹き付けて離さない。
2. Guitar
ギター、というタイトルの通りエレキギターが鳴るため、ロックっぽい雰囲気が生じつつも、こんなギターのきかせ方は聴いたことがない。アバンギャルド。それも分りづらいアバンギャルドではなくて病み付きになるやつ。ギターをギターで語るかのような構成。「君」よりもギターを愛する心情を歌う様は、プリンスの素顔を見たように思った。
3. Somewhere Here On Earth
古い映画のようなノイズで始まるこの曲は、その演出の通りどこか懐かしい。それもセクシーでおムーディー。シャンパングラスを傾け合うカップルの映像が浮かんでくるみたい。あたたかく満たされる曲。
もしも「この地球のどこかに自分を待っている人」がいることを信じられない一人身の人がいたら、たまには信じたら? って思う。自分が信じてないように、相手も信じてないから出会えないのかもしれないし。だったら今から一週間いっせいに信じたら出会い確立アップ、みたいな。
4. The One U Wanna C
このパターン、つまり「僕は君を愛してる」じゃなくて、「君は僕を愛している」「君は僕に会いたがっている」「君が僕を思っている」「君の好きな人って君は気づいていないけど実は僕」みたいな自信過剰バージョンが、底抜けに似合ってしまうプリンス。曲も軽快軽快。
5. Future Baby Mama
クリスマスソングのようなキラキラ。明るくて影がなくて、何も怖くないよって言われているみたい。
6. Mr. Goodnight
このアルバムは軽快で明るい曲が多いのだけど、これはまた調子と雰囲気の違う明るさだ。「世界中の人が僕をプリンスと呼ぶけど、君はMr. Goodnightと呼んでくれ」って、一体どうしたのでしょうか。ライナーノートでは「オヤスミ王子」と解説しているけど、どっちかというと「オヤスミおじさん」が近い気が。
世界を(というか地球全体を)見守る「オヤスミおじさん」になって歌う、面白くて童話チックな曲。
7. All The Midnights In The World
続くこの曲のプリンスはやさしい。やさしくてあったかくて涙がポロポロだ。
8. Chelsea Rodgers
そこから一転、ストリートの雑踏、街の喧騒、人の群れが現れる。メソメソするなって言われているみたい。
ここでは泣いてたら笑われるだけ。でもこの曲えらい格好いいワ。
9. Lion Of Judah
飢えたケモノのような雄たけび。これはプリンスが得意中の得意とする声の出し方。プリンスはやさしくなったからといって、引き換えに何かを失ったわけではないみたい。
→と思ったらそれほど雄たけび(ファルセット?)を上げていなかった。この曲の醸す渇望の気配がそう歌っているように思わせただけだった…
10. Resolution
amazonも他も「10. Revelation」と誤記しているため混乱したんだけど、CDのライナーも輸入版の紹介文も「Revelation」(秘密の暴露、意外な新事実、黙示)ではなく、「Resolution」(レゾリューション。解決、決意)なので要注意。
メッセージとしては、明確に反戦を歌っている。けども、憎しみも怒りも抵抗の激しさもなく、とても明るい軽やかさだ。アコースティックギターの音に始まり、あとさまざまな音楽的な重奏が繰り広げれ密度を濃くするけど、やはり憎しみ、怒り、抵抗の激しさには至らず、それらとは別の次元で、メッセージをし、疑問を投げかけ、提案をしている。言葉のメッセージと音楽自体とが、ケンカすることなく融合しひとつに溶け合っている。

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