シャングリラ / ムック
ムックのアルバムについて前回書いたのは3年半も前だ。
ムックを教えてくれたユマちゃんは最近になって、わたしが働いている病棟の上の階に入院したみたいで、ときどき自販機の前で見かける。「また入院してきた」というと、何か失敗めいて、悲劇めいて聞こえるけれど、そんなことはない。悪くなったら無理せず入院して整える、というのは悪いことではない。といっても、せいしん病床数が先進国の中で多すぎる問題もあるため、そういう観点からは感心しない話しではあるのだけれど、「バリバリと時代や社会の要請のまま働ける」わけでは「ない」人の居場所があるような社会になっていない現在、単に病床を減らすだけなのは難しい。ただし、その流れにはなっていることをここで場違いながら報告はしたい。詳しくはまた機会があったらupするつもりだが…。
ネットをみていたらムックがニューアルバムを発表した(2012年10月リリース)ようなので、その後の展開を聴いてみることにした。それにあたって、今回初めてiTuneでアルバムをダウンロードする、という行為をやってみた。今までは物としてCDにこだわっていたから抵抗があったのだが、一度DLしてみると実に快適だ。CDケースから出したりしまったりする煩わしさがない。しかも1000円くらい安い。今度からこれにしよーっと。
それは兎も角、シャングリラは結論から述べると大変によいアルバムだった。
せっかくだから、1曲1曲コメントしてみよう。それに、言うまでもないが311で起きたこと、あるいは311以後の日本を反映した内容になっている。ただムックの場合以前からシャングリラとかニルヴァーナ的な、場合によっては往年のガンダーラを難しくしたような曲の世界観があるので、必ずしも311の反映とばかりは言えない。そこがちょっと物足りなくもあり、もっと明確にメッセージしたら良いのに、と思わずにいられなかったのだが…。
1. Mr.Liar:
ミスターうそつきというタイトルだから、「嘘つきな大人」を批判した攻撃的な曲かと思いきや、嘘つきは自分?? いや、よくわからない。思っていたほどの攻撃性はなく、ハードな中にも内省感のある曲。
2. G.G.:かっこいい曲。ドッヒャーみたいなドヘーーみたいな(注:そうは言ってないw)少年マンガの悪役の顔が浮かんでくるみたいな歌い方が凶暴でかっこいい。とても洗練された曲。おーおーとかいうコーラスもよい。
3. アルカディア:
西アジアみたいな中央アジアみたいな異境的な曲調はまえまえからムックの得意とするところだったけど、歌詞が色っぽく悩殺的な曲になっている。
4. ニルヴァーナ:この曲は311以降の東日本をイメージしている、と思われる(が明確には分からない)。311以前は、限定的な事情の人ばかりに(たとえばユマちゃん)強いられていた痛みが、311では無差別にみなに襲いかかった。今人々が求めるものが繋がりとやさしさだとすると、それに応えたと思える良曲。あったかく、大きな広がりを感じさせる。
5. ハニー:これは「賽は投げられた」のアンサーソング。だってハニーといったらHONEYに決まっているもの(決めつけw)。爆弾が落っこちて壊れたこの世界、どうしたらいいんだろうと途方に暮れるけど、とりあえずSNSがあったナという。
6.終着の鐘:なんか、今の気分にフィットした曲だ。歌詞がちゃんとしているので、いろいろと考えて聞ける。
7.ピュアブラック:50年代のアメリカのバーで演奏してたみたいなジャズ? のような曲。こちらの歌詞は反対に、SNSでは絶対に出せないブラックな本音について歌っている。
8.狂乱狂唱:若干いい人に傾きすぎたところ、やはりこういう曲がないと。
9. MarryYou:まさかのウェディングソング。ブーケを擬人化するというニッチな発想で、結婚と花嫁を照れずにた祝福できた。結婚それに花嫁もステキだね☆
10.夜空のクレパス:色々な色が出てくるけど曲調はパステルカラー。
11. YOU&I:「絶対いつかずっともっときっと向こうまで飛べるはずさ」って無責任に自分も言いそう。自分はどこにも飛べないくせにね。ついで「実際そんな簡単じゃねえお先真っ暗だ絶望だ」と語数多くたたみかけるこの曲、スピーディーで颯爽としていて気持ちよく聞ける。事態は絶望なんだけど。
12. MOTHER:MOTHERの解釈が難しいけど、よい曲。「君にまだおそわってない」なんて言われたらノックアウトされるよね。これこそ「君」が一番嬉しいモンなんだ。「おれがこうだ、おれはこうする、おれはこう思う」とオレオレやられてばかりだと凹むし…
13.シャングリラ:静けさと躍動が同居した曲でメロディはゆったりしているけど、背後は動的。最後までそのドラムの感じでいってくれーと思ったけど色々と展開。ドラマチックになる。