EVERLASTING

EVERLASTINGのジャケットはCDジャケットのくせに昔のLPレコードサイズだ。サイズもだがそれ以上に驚いたのは、赤い傘をさした女の子の、地味めのイラストだ。 今までゴージャス・祝祭・非日常路線で来ていたL’Arc-en-Cielとしたことが、どうしたことか? と不思議に思った。さらにジャケットをよく見ると描かれている背景は、あの8万人×二日を集めた国立競技場のようだ。しかしイラストでは今はそこは無人であり、無人の国立競技場のメインスタンドで少女は傘をさしてたたずんでいる。と、考えたら、赤い傘の少女はL’Arc-en-Cielその人という考えがまず浮かぶ。浮かぶけれど、ジャケットの解釈よりもまず聴こう。聴くにあたって、不安感はほとんどなかった。以前は新曲のたびにドキドキハラハラしていたが、今は何が起きてもあるがままだなと思うようになった。わたしにとっての最良の音響環境であるCDウォークマン+PHILIPSのHP830の組み合わせでおもむろにスイッチオン。じっと息を殺して最初の音を待つ。ドンッ!! えらく低い叩く音がドンと来て、これまた意外だった。ジャケットのイラストから想像するようなアコースティックな感じはまるでない。さらに思ったのは「これはユッキーさんっぽい!!」という驚きで、いったい何をいちいち驚いているのか訝しがられそうであるが、こんなにストレートにユッキーさんが、つまりは「インダストリアル・ミュージック」っぽい(ぽいと書くのは用語に自信がないからであって他意はない)音が堂々とくるとは!!と思ったからだ。無機質でありながらも不快感や冷たい感じがなくて、ひたすらかっこよい。そのまま惹きこまれ聴き入っていたところ、次に前面に躍り出たのが、古いヨーロッパの劇場に迷い込んだような華やかでいてレトロな音響。ここらへんの、前奏という言葉じゃもったいないくらいの幻想的なパートに惹きこまれた。それで半分夢の世界に行きかけていたところ、息を吸うブレス音がきこえほぼ同時にハイ声が来て歌が始まった。歌詞よりもまず気になるのは声の感じ。感じはすごくいいと思った。細やかに声で表現しようとしているのが伝わる。曲全体が疾走感を押さえ押さえて、ノターーといやらしいくらいゆっくりしているから、そこへ乗る不規則なハイ声が合う。ハイタンはやまないやまないって言ってた。どうしてやまないのか、やんでくれたら終わりにできるのにって。でもやまないのはあながちイヤでもないみたいなんだ。いったいどっちなの? と聞きたいのは第一にファンだと思う。そうそう、赤い傘の女の子は、L’Arc-en-Cielその人と考えるよりもファンかもね。やまないでいることは、女の子にとって幸福なことかどうかも、わからないのだし。だからジャケットの裏を見ると女の子は成長していて、雨はやんで光が射している。あたりにはホワイトフェザーが舞っている。複雑な愛と恋と執念と欲と祈りから抽出された一番純粋なもの、それがEVERLASTING。最後の最後はギターの音でシメなんだけど、あたかも飲み屋で飲んだ暮れたあとのシメがラーメンであるような、昭和な味わいのギターサウンドで、ほんと笑った。自分で言うのもナンだけど朗らかな笑いが思わず込み上げて、アハハハとしばらく笑って、なんかHAPPYになった。で。曲が終わって、しばらく次の曲を待った。まだ何か始まるような気がして。ずっと待ったけど、何の音も鳴らなかった。あたりは静かだった。それでジーーンといろいろ込み上げて、聴いてる最中よりも聴き終わった後に込み上げてきた。