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2004-01-02

【問題小説】

冬の間、水泳部は干上がった魚みたいに陸上部と化していた。

プールが使えないので、400メートルトラックを20周するのが日課なのだ。

でも僕は、陸の上を走るのが好きじゃない。

地面が固いからだ。

なんて「わがまま」も、もうすぐ言っていられなくなるのだが。

今年、インターハイ出場一歩手前まで勝ち抜いた僕は、来年度は部長をつとめなくてはならないのだ。

気楽な無責任を楽しんでいられるのも、今のうちだ。

その日、僕はいつも通りきっかり5周で切り上げて、教室に戻った。

放課後の教室には誰もいなかった。

さあ、帰ろうか。ゲーセンにでも寄って。

鞄を肩に乗せて歩き出すと、黒板が目に止まった。

白いチョークで何か書いてあった。

 ベッコウ飴 君への想い 煮焦がして

黒板に近寄ってもう一度読んだ。

 ベッコウ飴 君への想い 煮焦がして

いったい誰が?

最初に浮かんだ疑問だ。

教壇の上の小さいペン立てに、なるほど、ベッコウ飴が差してあった。

黒板の内容とシンクロしている。つまり、プレゼントのつもりか?

その推測を補強するように、透明なセロファンで包んであった。

ベッコウ飴は、子供の頃、夜店で買ったことがある。

溶かした砂糖と水あめを、鉄板の型に流し込んで焼くのだ。

あれは確か、ひょうたんの形をしていた。

今目の前にあるやつは、何の形だろう? 

閉じかけた傘? 蝶のさなぎ? それともひょろ長いサンマか?

腹の減っていた僕の口腔内に、唾液が湧いた。

無性に甘いものが食べたくなっていたのだ。

食っちまおうか?

夜店のベッコウ飴の、甘い味が蘇り、我慢できなくなった。

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◆選択問題1:黒板に文を書いた人物は誰か?

a 「僕」に好意を持つ女子

b 「僕」に好意を持つ男子

c 「僕」以外の人物に好意を持つ女子、もしくは男子

d 「僕」を騙そうとしている人物

e その他

◆選択問題2:ベッコウ飴の本当の形は何か?

a 傘

b さなぎ

c さんま(などの魚類)

d ハート

e 「僕」

f ひょうたん

g 特定不可能

h きのこ

i ロケット

j 蛸

k 何でもない

l その他

◆選択問題3:この後「僕」のとる行動はどれか?

a ベッコウ飴を食べる

b ベッコウ飴を食べないことにする

c 黒板に書かれた文について考えをめぐらす

d 思い直してもう一度トラックを走り出す

e 黒板に書かれた文に返事を書く もしくは自分も何か書く

f 何かを思い出す

g 自分が好意をもつ相手のことを思い出す

h 心当たりのある人物を思い出す

i 自分へのラブレターだと気づき相手は誰かと考える

j 自分へのラブレターだと気づきベッコウ飴を食べる

k 自分へのラブレターかもしれないが自分以外へのラブレターかもしれないので悩み出す

l その他

◆選択問題4:この後起きる「僕」以外に起因する出来事は何か?

a 黒板に文字を書いた本人が入ってくる

b 担任の先生が入ってくる

c 水泳部の部員もしくは顧問が入ってくる

d 「僕」の彼女が入ってくる

e 「僕」の片想いの相手が入ってくる

f 絶世の美女が入ってくる

g 親の仇が入ってくる

h 水泳のライバルが入ってくる

i 親友が入ってくる

j ベッコウ飴に毒、もしくは睡眠薬が入っていた

k タイムトリップする

l 拉致される

m 死体が転がっている

n 夕陽が沈む

o その他

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