昼時、病院で美術を教えている先生と食堂で一緒になって、「個展をひらいているから是非観に来てね」と誘われた。
わたしの働いている病院は、「一般科」ではなくて「せいしん科」であるため、治療や社会復帰の手立てとして、さまざまな療法を取り入れている。絵を描いたり、陶器を作るのもその一環なのだ。だから、通常の病院にはいない、美術の先生がいる。
といっても、わたしは美術の先生と話をしたことがなかった。
それがすぐに打ち解けたように個展のお誘いとなったのは、ちょうど同世代の女性同士の気安さからだろう。わたしも調子だけはいいタイプなので、すぐにも個展にお邪魔する風に答えていると、
「でもね、あたしは油絵も描くけど、本来は彫刻なの」
まるで告白でもするように、ちょっと小さな声で先生はいう。
彫刻の方が絵よりも、どこか恥ずかしいのだろうか?
わたしは絵だろうが彫刻だろうが、どっちでも構わないので、
「あ、立体なんですね。」テンポを止まらせないために思いつきでいうと、
「そう立体」と、なんとなく安心したように言う。
「立体っていいですよねー 置いておけるし。いろんな角度から見れるし」
これは特におべっかではなく、本当にそう思っている。
「そうねえ(笑)。でも邪魔になって仕方がないの。狭い部屋が彫刻だらけ。捨てるのも大変だし」
先生は、笑顔のまま、でも本当に大変そうに言う。
その時フと浮かんだのは、せいしん科の病院で教えながらとはいえ、好きな道を貫いて生きている女性の、にぎやかに散らかった部屋だ。
彼女の立体作品より、その部屋が見てみたいように思った。
わたしの働いている病院は、「一般科」ではなくて「せいしん科」であるため、治療や社会復帰の手立てとして、さまざまな療法を取り入れている。絵を描いたり、陶器を作るのもその一環なのだ。だから、通常の病院にはいない、美術の先生がいる。
といっても、わたしは美術の先生と話をしたことがなかった。
それがすぐに打ち解けたように個展のお誘いとなったのは、ちょうど同世代の女性同士の気安さからだろう。わたしも調子だけはいいタイプなので、すぐにも個展にお邪魔する風に答えていると、
「でもね、あたしは油絵も描くけど、本来は彫刻なの」
まるで告白でもするように、ちょっと小さな声で先生はいう。
彫刻の方が絵よりも、どこか恥ずかしいのだろうか?
わたしは絵だろうが彫刻だろうが、どっちでも構わないので、
「あ、立体なんですね。」テンポを止まらせないために思いつきでいうと、
「そう立体」と、なんとなく安心したように言う。
「立体っていいですよねー 置いておけるし。いろんな角度から見れるし」
これは特におべっかではなく、本当にそう思っている。
「そうねえ(笑)。でも邪魔になって仕方がないの。狭い部屋が彫刻だらけ。捨てるのも大変だし」
先生は、笑顔のまま、でも本当に大変そうに言う。
その時フと浮かんだのは、せいしん科の病院で教えながらとはいえ、好きな道を貫いて生きている女性の、にぎやかに散らかった部屋だ。
彼女の立体作品より、その部屋が見てみたいように思った。