「眠りのための暖かな場所」を読んだ。
これはちょっと微妙に魔物系かもしれない。
魔物系といっても、はてなでキーワード化されてないところをみると、わたしが勝手にそう呼んでいるだけで、なんら認定は受けていない。ミステリの変形+あり得ない人物像の設定と描写、とでも説明すればいいだろうか?
たいがいあり得ない人物は、予知能力や、直接手を下さないで人を殺めたりする、超常的な能力をもっている。だからといってテレポーテーションとかサイコネキシスみたいな言葉を使うと、一昔前の石森章太郎の漫画みたいになってしまい、雰囲気が違ってくるので、そういう言葉は出てこない。
つまり、雰囲気が重要。
本多孝好は、この雰囲気の盛り上げ方がとてもうまい。
雰囲気を盛り上げていく事と、人物の心情や状況の説明が自然に噛みあっていて、わざとらしさがない。多くのことが、幼少期のトラウマに根ざしているのだが、トラウマの描き方があまりどきつくなくて、ほどほど程度なのも有り難い。
そんでもって、こういう言い方はちょっとイヤらしいけど、「上質」な読み物、という言葉がぴったりくる、エッジのきいた会話文とディテールの固め方だ。
そしてそして、「ラブストーリー」であるということ。
まるで、豹変するようにラブストーリーとしてまとまる。
それは、「すべては『ラブストーリー』なのかもしれない」、と思わせる豹変の仕方だった。