高校生、バンド。文化祭を目指して! 第二回

 「ACIDMANの良さを分からせたい!!」

 心の奥底からそう思った。と同時に、最初に達也が直面した課題でもあった。

 米倉とは、最近知り合ったばかりで、お互いをよく知り合っている幼馴染みとはワケが違う。それに、それほど友情っぽいものが芽生えて、青春青春しているわけではないので、どう切り出せばいいのか分からない。

 自分の好きなものを(この場合ACIDMAN)伝えて、それを否定されたら、完全アウトだ。おれは立ち直れないだろう…   しかし、仕方がないので、とりあえずCDを貸すことにした。

 ACIDMANを自分らのレパートリーに加え、可能なら自分が歌を歌うことに関して、まだまだ問題はあった。ぶっちゃけ、達也は歌が上手くない。ACIDMANは意外と音程が高いので、達也は高い声が出ず、それでも無理に歌うと、溺れかけたアシカが助けを求めているみたいな、悲壮なかすれ声になってしまう。

 家が狭いので、練習している時の歌がわたしにも聞こえてしまうのだが、歌なんだか妙な呼吸法なんだが分からない始末だ。

 その上、バンドとしても問題山積で、ドラマーがいない、ベースがいない。今いるのは、ボーカルの米倉、ギターの達也、達也とは小学校1年の頃から顔なじみの、でも特に親しかったわけではない、キーボードの森。

 合わせて三人だから、「スリーピースバンド」としてやっていけなくもないが、そのためには、ボーカルも楽器を持たなくてはならない。   ということで、「おまえ、ベース買えよ」と米倉に言うことになるのだが、米倉は「カネがない」「カネがない」の一点張り。こうなると、何一つ前進しなくなってしまう。

 ということで、この時期さんざん愚痴を聞かされたワタシなのである。

 本当に愚痴っぽい人なので、だんだん「おれ、ギターなんか好きじゃない」とか「ギター弾いてても楽しくない」とかグチグチ言い出して、ほんとうに面倒くさくなった。

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