てがみ / HY

前野さんにもらった音楽データの中で、特に気に入ったのはHYの「てがみ」で、繰り返し聴いている。
とくに、♪置いてきた思い出はーー あたりで入る女声コーラスとてもいい。
VOはやさしく穏やかな印象の男声。歌詞がそうだからそう思うのかもしれないが、悪くいえば優柔不断な印象でもある。
そこへキリリとした気の強そうな女声が後ろからハモる。(もうひとり、他の男声もちょっとだけ入る)
複数の声の重なりによって歌の描いている世界がうんと広がっている。

その女声は気が強そうなだけでなく、一箇所色っぽく裏返るところがあって、そこもいい。歌詞はまさに置いてきた思い出についての歌で、どうやら、自分が別れを言い出したようだ。なのに、未練がわいてわいて仕方がないのだ。
「ヘタレ」といいたくなる情けない歌詞。ケツメイシの「さくら」も過去振り返りパターンで似ているが、ここまで哀しくはない気がする。

といっても、ホントに、こんなものだと思う。
なんだか納得してしまう。
♪置いてきた思い出はーー

それでも、「ふたりで歩いた坂道や やたら狭い道
どれもこれも思い出は濃ゆすぎてならない」
そんな思い出の1ページがあるだけいい。
前野さんときた日には、そんな1ページどころか、そのまた1行もないのだから。

今まで、わたしや同僚がおせっかいを焼き、ずいぶんとそうじゃないああしろこうしろとアドバイスしたが、無駄だった。
それでも、彼女がいない者の特権で、ひとりがだめならすぐ次に移れるのである。
事実、彼はそうしてきた。
女の職場なので、かわいくて独身の子は少なくない。しょっちょう入職もしてくる。
この子がだめなら、次の子と、彼の移り身の速さは忍者並である。

わたしらはよく「前野さん、ほんとは誰が好きなの?」とたずねたものだ。
「もてようと思っちゃだめなんだよ」という、真摯にしてナイスアドバイスも。

サヤちゃんは、歴代のかわいい女の子の中でもダントツだから、今度という今度は彼もかなり本気顔だ。
なんだか、バレンタインデーの後がこわい。

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