TAKESHIS’

TAKESHIS' [DVD]
チャンネルnecoで『TAKESHIS’』をやっていた。『TAKESHIS’』は、拳銃が次々出てきて派手にぶっ放され、人が次々死んでいく映画だ。
といってもそれは映画の見せるイリュージョンで、本当に死んでいるわけではないことを観客は知っている。知りつつ、死んだと見せている夢に乗っかって、悲嘆に暮れたり胸打たれたりするのだ。
ところがせっかくその夢に乗っているのに『TAKESHIS’』の登場人物たちは次々生き返ってしまう。
生き返るので、それが映画の見せた夢だったと目覚めてしまう、にも関わらずまた拳銃の打ち合いは始まり、そういう場面にふさわしい緊迫感のもと、また誰かが死ぬ、ということが繰り返され、夢見ては目覚め、目覚めては夢見る無限ループにはまりこみ、人はどうしてこう夢見やすいのかと呆れる。そのうち夢の性質はわずかずつ変わり、映画中ちょっと憎たらしい人物だった美輪明宏が「父ちゃんのためなら エンヤコラ 母ちゃんのためなら エンヤコラ」とか「貧しい土方の あの唄が」と歌い、日ごろの自分の感性では考えられない共鳴が生まれている気がする。

それに今さっき調べたらこの歌は「ヨイトマケの歌」といって、本当に美輪明宏が作詞作曲した昭和41年のヒット曲でしかも「土方」という言葉が差別用語であるとのイチャモンで発禁扱いにされたようだ。(参考 ヨイトマケの歌詞は真中あたり)

美輪明宏という人、ただの美意識過剰の人ではなかったらしい…と初めて知った。

知らないことって多いものだ。そんな感じで四方八方興味を分岐させる駅みたいな映画なので、DVD時代に対応したいつどこから見ても飽きなさそうな映画だ。ただ、普段のたけし映画がもつ、登場人物が日本人なのに日本人に見えないあの感じが、今回は弱まっていたのでそれだけが残念だった。

 

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