NHKの子どもの貧困報道について自分の考えたこと。人の考えたこと
Ⅰ 高校生は、「子どもの貧困」を当事者として語れる、子どもとしての最後の年齢
NHKが8月18日に「ニュース7」の中で「貧困女子高生」について報道した。
これがかなりゾンザイな内容だった、という。どうぞんざいかというと、貧困を訴えた女子高校生–仮にUさんとしよう–の室内を“不用意”に映してしまったこと、UさんのTwitterをノーチェックだったこと、Uさんの姉の存在を軽視していたこと、「相対的貧困」と「絶対的貧困」の違いを知らない人が多い点に配慮しなかったことetc…―――結果、激しく炎上、燃えさかってしまった。
NHKに不備で不用意で頓馬な点があったのは確かだろう。けど、この報道の本来の目的は「子どもの貧困」という大きな社会問題を知らせることだったはずだ。子どもは、年齢が低かったら窮状を訴えることはできない。本当なら4,5才の子どもが出てきて、生活の苦しさを話してくれれば、子どもの貧困問題を一番アピールできる。けれど、能力的に無理だし、「親に利用されてる」とか言われそうだし、子どもの人権上もどうかと思う。
今回、より子どもに近い年齢の高校生が「自分の言葉」で貧困の苦しさを訴えた。貧困を訴えるなんて基本みじめなものだ。Uさんより貧困だったら人前に出てこないと思う。
子どもの貧困全体に目を向ける、という大枠を見失って、Uさんと頓馬なNHK批判に終始しちゃもったいない!!
Ⅱ 文字数にして6万字超のコメント欄
とはいっても高校生ともなると、「バイトして稼げ」とか「欲しい物を我慢して貯金しろ」と言われる余地がでてくる。NHKはその点に留意しなければならなかった。どういう批判があるのか知りたかったら↓↓このブログのコメント欄がものすごく役立つ。
「ねつ造報道した」とNHKに対する、あるいは女子高校生に対する怒りでふきあがっている一部ネットユーザーに、ブログ主は落ち着けと促す記事を放映の翌日に投稿していて、
上記の「相対的貧困」の定義がある以上、「こんな色々買ってるヤツを貧困とはいわねえ!!」と騒ぐことには、1ミリグラムの意味もありません。ある貧困な人が、他の貧困な人の足を引っ張ることほど非生産的なこともありません。絶対的貧困以外を貧困と認めないのであれば、それこそ貧困に対する対処なんてできないですよ。4畳半で、調度もなにもないような家庭しか貧困と認めないんですか?って話です。
と、しごく真っ当な事を書いているんだけど、そのコメント欄の充実ぶりがものすごいのだ。文字数にして6万字以上、熱量にして何万キロカロリーになるのか算定できない。中には、ブログ主を見当外れに罵倒するコメもあるが、NHKがいかに隙だらけだったか、いかに高校生の訴える貧困が理解も共感もされづらいかがわかる、厳しい現実を突きつけられるようなコメ軍団だ。
(もっとも最後のほうはだんだんネトウヨ?化して、高校生が在日になっていくのが妄想爆裂)
この他にはもちろん2ちゃんねるもある。「腎臓売れば500万になる」などと、とんでもない意見も入るがバラエティに富んでいるのでまだいい。ところがまとめサイトが酷いのばかりを集め、あたかも国民の総意みたいにするからやってられない。
Ⅲ ONE PIECEもアニメもEXILEも、消費者の「好き」という感情を糧にしている産業。ここで女子高校生を責めるのは、日本の内需を縮めるだけ!!
「そんなにいろいろ買えるの貧困じゃない」と、当該高校生Uさんの消費行動が批判されている。けど、ここでわたしは言いたい。
アニメもアイドルも音楽も、もともと散財させるための産業。
必需品でもなけりゃ衣食住に関係するわけでもなく、栄養や健康にも無関係だけど、どんな貧乏人からも金を取れるのが特徴。なぜなら好きだから、大好きだから、欲しくて欲しくてたまらなくなるから。
昔なら、この衝動を起こさせるものは、一冊100円台の漫画雑誌と200円台の漫画単行本くらいしかなかった(人による)。ところが、だんだん人気漫画は必ずアニメになるようになった。アニメになったらおもちゃ会社がキャラクターグッズを出すようになった。その頃はまだ自然発生的に「人気あるから出してみるか」みたいな控え目さがあった。それがだんだんと、最初からそれ狙いになっていった。
時代は下ってポケモンが出てきた頃。うちの子ども達も毎週熱中してアニメを見ていた。そのうちポケモンがゲームソフトになり出した。アニメは見るのタダだがこっちは5000円もする。しかもポケモン緑だのポケモン赤だの金だのと次々に出るのである!!
もーいい加減にしてくれって心底思った。かといって、買わないなんて選択肢はない。子どもが何が何でも欲しがっているものを、あの時代のあの空気で買ってあげなかったから、かわいそうすぎる。
こんな愚痴は今さらいいのだけど、すべてその調子でちょっとブレイクしたものは、関連商品が次々出る。そして何が何でも売る。そういう時代。
でも、そうやってみなが必死で稼ごうとしているものを、文句を言ってもしょうがないじゃない。
まして経済活動って、物流も物販も交通も飲食も映像・音響関連機器も各種コンテンツもゲームも相当なところ、人の熱中エネルギーを資源にしているわけで、巡り巡って、Uさんを叩いている人の給料に反映している。Uさんの行動にダメだしするのは、無意味すぎる。
リンクプラス
目立った記事へのリンクをはってみる。
まず18日の放映があり、炎上し、それがニュースになり、さまざまな人が分析と意見を言語化する(ここまでが初動)、そうすると、それに対しても反応が出てくる、そこでまた分析と意見の言語化という流れで、それは今も止まっていない。
初動→→→それに対する補足、訂正、肉付けor批判→→→補足、訂正、肉付けor批判→→→→それに対する補足、訂正、同調、強化、肉付けor批判or追加情報→→→
この中で除外すべき言語化が、一つ絶対的に決まっている。Uさんへの攻撃だ。そもそも、もうUさんは出てこないでいいはずだ。彼女は子どもの貧困を訴えるという仕事をやり遂げたのだ。
「不在の父親に養育費を払わせればいいだけ」といった未処理のタスクもあるかもしれないし、実際それをやったら彼女の貧困は解消するのかもしれない。が、不確定なうえに個人情報にすぎるので、「やったけど払わないケース」として考えていい。
8月25日毎日新聞。当方が最初に見たやつ 小池一夫氏が21日、Twitterで現在騒動となっているNHKの貧困特集に言及、いち早く、Uさんバッシングする層を牽制。 8月23日。おもに反NHKイデオロギーのネット右翼とその片棒をかつぐ片山さつき批判。この批判はバシバシやってほしいですね。最初に炎上を起こすのは富裕(非貧困)層で、ついで貧困層がのっかる、との説があるようだ。
うーーんどうなのか? 金もってる層もかなりストレスたまってるから?
あと、自分も貧困なのに貧困を叩くのは、同類嫌悪の情??
余談だけど、先日、千葉県でせいしん科医をやっている人の講演があった。その方がいいことを言っていた。
せいしん科の病気は、無為や自閉的になるなどの症状があって、自己嫌悪しがち。
大事なのは、病気を外部化し、たたかうための武器をもつことであると。
武器には、薬もあるし、各種サポート体制、心理の勉強、知識、病気の知識、薬の知識。
「自分=病気」ではない、と捉える大事さを言っていた。
これ、他にも応用きかないか? と、聴きながら思った。
どんなに貧乏な人でも、「貧乏=自分」 じゃないはず。「わたし=わたし」「自分=自分」のはずだ。貧困という要因を外部化し、たたかうための武器を持つことを検討したらいいのじゃないか? ・・・・もはや個人レベルのたたかいじゃ無理っぽいのだが。
8月31日。貧困問題のエキスパート湯浅氏が、「腹落ちさせられなかった」、つまり、広く世間一般に、「腹にすとんと落ちるように」貧困を理解させる、ということができなかった痛恨の思いをこめて記事ポスト。人に分かってもらうというのは、ほんとーに大変だろうと思うけど、あきらめないでほしいと思います。
その上で、今回のNHKの報道の女子高生のケースでは「絵が好きで、アニメのキャラクターデザインの仕事に就きたいと、専門学校への進学を希望していた」という。「キャラクターデザイン」という仕事の厳しさや専門学校への志望ということが本当に本人が進む最適解なのか、キャリア教育が十分になされてない可能性があることについては既に指摘した。
個人の進路問題にふみこむと、テーマが違ってくるのでは・・・
と思いつつ、わたしもこれは思った。わたしなら子どもにデザイン学校は行かせない。
というか、50万で入れるか? という疑問ももった。
専門学校は学校にもよるだろうが、大学とさして違わないくらい金かかる。
デザイン学校は貧困ビジネスならぬ、貧困ドリーム詐欺ビジネスといっていいのじゃない? あと、子どもがやたらと行きたがる声優の学校も同様。
これから、メディアは「貧困の実態」以上に、「貧困の連鎖」あるいは「貧困の悪循環」をどうすれば防げるのか、といったことを主題にすべきだろう。とりわけひとり親の世帯は生活保護の受給率が高く(2011年で13.3%)、生活保護家庭の大学進学率が31.7%と大学進学率70.2%に対して著しく低く、父親の所得が低いとその子どもの所得が同じように低くなる率が3割以上という数字が出ている(参照)。
メディアに限らず、まず政治がやらないと、と思った。日本は教育を市場に任せすぎている。
デザイン学校なんか行っても、職業にはつながらない。かといって、高校を出てすぐさま働くのでは、夢もゆとりもないし、まして昔と違って、会社の人が社会人教育をしてくれるわけでもない。単に使い捨てにされるだけだ。
いったんのモラトリアムが必要だから、どうしてもデザイン学校みたいなところを希望する。
そして金だけやたらと取られる。
また、国公立大学を中心に、授業料減免制度も整えられている。番組で紹介された彼女は、「デザイン系」の進学希望とのことだが、東京藝術大学(国立)や首都大学東京(都立)などには、デザインに関わる学部もある。入試をパスすれば、進学費用自体は、何とかなるだろう。
あまりに簡単に書いてあるから牛乳吹いた。芸大なんかそれこそ金かけてびっしり五科目の成績あげないと入試にパスしない超難関校。武蔵美、多摩美くらいだと同僚(それもふたり)のお子さんが両校とも受かってたけど、すごい金かかるらしい。らしいけど、不可能ではないみたい。
きっとこの方は根っから勉強が大得意なのでしょう。そういう勉強ができない子(経済的理由か本人の資質的理由)がデザイン学校という、貧困ドリーム詐欺にひっかるのですよ~~