「このマンガがすごい」がすごかった/☆
今期に欠かさず観ていたドラマは『今日から俺は』と『このマンガがすごい』で、前者は有無を言わせない面白さだった。わたしだけでなく、娘とも気が合って面白がれた、という点もうれしいポイント。といっても、けっこう暴力シーンはハードだったので素直に面白いと言えないんだけど、そこを生ぬるくやると逆につまらなくなりそうではあった。ツッパリ高校生だけではなく、こんだけ荒れた高校でもアイデンティティに1mmのブレも発生しないマイペースな先生達が面白くて面白くて、もっと出番があればいいのにと、思いながら観た。
ドラ丸が録画した『このマンガがすごい』を最初観たとき、意味が分からなくて、1/3くらいで観るのを止めた。その後も何回か再生するんだけど中に入れなくて途中で投げて、でも気になるから再生してを繰り返していた。で、ある時でんでんのおそ松くんの実写版を観たら「これえっらい面白い企画だな」と思って、あとは一気呵成に録画済みの10回分と、ドラ丸が録画し損ねていた初回と二回目をU-nextで観た。一度再生が始まったら、気がつくと前のめりで観ていた自分だ。
「『漫画のコマに役者が入る』までの挑戦を記録したドキュメンタリードラマ」というキャッチフレーズの通り、まずナビゲーターの蒼井優がゲストの役者に好きな(かつ実写化して自分が演じたい)マンガについて語ってもらう。蒼井優はそのマンガを知らない(というかマンガそのものを読んだことがない)がために、役者が語る話には直接は賛同も反論もできないのだけど、それがまたいい。蒼井優は単行本をめくりながら、感想を言ったり「どっちの役をやりたいのか」と聞いたりする。たぶん、あらかじめ役者が持ってくるマンガは聞いているのだと思う。というのも、その場で初めて手にしたにしては、リアクションが的確だからだ。
そんなこんなで役者と蒼井優は話をするんだけど、そのマンガを熱烈に好きになるって、とても個人的なことだから、普段なかなか人とは語り合わないような深い話になっていく。それは、相手の心の井戸を掘り当てるような、そこから水をくみ出そうとする月夜の井戸掘りみたいになる。視聴者にとって役者といえば、テレビやスクリーンでお目にかかる遠い存在だ。その遠い存在がマンガの単行本をガサガサと袋から取り出したり、好きなマンガがこれなんだと言い出すのをみると、その人にぐっと近寄って肉薄していくような、珍しい感覚を味わえる。
千葉の長浦を舞台にした「つげ義春」の回は、やばいくらい傑作だった。そもそも「つげ義春」のマンガをペラペラとめくってる時の蒼井優さんの動じなさにも感心した。わたし(の世代の女性)(で少女マンガ好き)にとって「つげ義春」ってのはあんま近寄らない方がいいマンガという位置づけだからだ。なんせ露わな妄想がすごい。そんなこんなで、どの回もめっちゃ引き込まれた。特筆したいと思うのは、『火の鳥 望郷編』の回だ。この回に登場した風俗?の女性との会話に光る井戸の水にも注目だ。こんな話がしあいたいと、憧れる。もちろん「地球外生物のムーピー役」ってのがぶっ飛んでてすごかった。
ウテナの回、撮影って大変なんだなぁと思った。森川葵の回、こういう持ち味の役者さんをもっと起用してほしいものだと思った。
でもって、最終回が想定外だったのは、ナビ役だった蒼井優が今度はマンガの実写化をすることになった段だ。今までに登場した役者達が蒼井優観を語り、このマンガを演じるといいとすすめる。いろいろ言っていたが、わたしに言わせれば蒼井優は「大島弓子」以外に思いつかない。これ、最大級に近い賛辞なんだけど、「大島弓子」はすでに過去の人なのか、もしくは若い人はもう誰も知らないのか、この人の名前はまったく出てこなかった。どちらにしろ結局、大橋さんて漫画家が描き下ろしたマンガを演じることになったのだ。大橋さんって漫画家はとても若いごく最近の漫画家なので、当方はついていけないだろなーと思いながら観たら、存外面白いマンガだった。SFの。未来派の。
また最初からみーよおっと。