DRINK IT DOWN / L'Arcーen-Ciel, media:シングルCD

本作の発売日は4/2だったわけであるが、


4/2のとっくの前に、YouTubeで、ニコニコ動画で、テレビのPVで、さらには「Devil May Cry4」(ゲームソフト。本作がテーマ曲)で、さんざんぱら聴いていたので、「もうCD買わなくてもいいか?」くらいの状況だったのだけど、やっぱ買ったのだった。そして一聴。
それは一仕事終った後の、夜の闇の中で聴いたのであったが、古い洋館で夜な夜な亡霊が奏でる弦楽器のような音色がモノラルに響いたかと思ったら、ドドドックン、と、艶めかしい重低音が、あたかも動脈の拍動のように脳内に響いたのだった。以降、低音(たぶんベースとか)の艶、深み、奥行きが曲全体の基調をなして、底をのたうつように脈打ちつづけた…
MP3等ではどうしてもこういう聞こえ方にならず平板になってしまうから、CDはその存在意義を失ってはいないことが分る。
本作は歌の出だしが「滑らかに貼りつく感触 闇とは深く味わうもの / 身体中へ受け入れて感じよう」であるのを見ても分る通り「闇」がメインテーマであり、全体にダークな曲調である。しかし中途の歌詞を見ると「鏡は今砕かれ見たことも無い君が目覚めて」「身代わりに失った鮮やかな幻想が弾けて」と、意外にも覚醒と再生の歌のようでもある。どちらの意味も含みこんでいるのを見ると、闇とは胎生の場所、生まれ出でる前の場所のようでもある。
あまり歌詞についてグダグダ検証する趣味はないし、もとより「Devil May Cry4」の物語にのっとって作詞されているはず(わたしは子どもがやっているのを見ただけで自分じゃやってないので詳しい内容は分っていない)なのであるが、もとから提示されているホラーな(吸血鬼的な)イメージとダブル構造でそう考えると面白いツボにはまる歌詞だ。一方、ダークな割りにはガッチリとした音の構成とスピード感は、生き生きとした力強さを感じさせる。逆に言えば、これだけの曲に出来る技術と努力と力があるからこそ、中途半端で陳腐でえげつない闇が日夜ニュースをにぎわすこの時代に、「味わう」にふさわしい「闇」を作り出せたのだと思う。
◆DUNE2008
吸血鬼を想起させるDRINK IT DOWNとつらなりを感じさせる曲。歌詞だけを見ると、何とも儚く繊細な世界だ。
「二人は砂になる」という歌詞で思い出したのけど、40年近くも昔、山田ミネコという漫画家が「魔法使いの夏」という、最後に砂になって霧散してしまう少年の哀切きわまりないマンガを描いていた。少年は不老不死の村に住んでいて、自身も無限の生を生きている。その村の住人は、悪魔に生贄を捧げることで永遠の命を手に入れているのだ。
「やっと魔法使いをみつけたわ。お前は笑ったけど、魔法使いは本当にいるのよ」という手紙を寄越したきり消息を絶った姉を追って、主人公の万里はその村を訪れる。
姉の出合った魔法使いとは、少年の姉であり、悪魔の手先の役をしている女性だった。少年の姉、少年、村人との交流と、不気味な出来事が数々起きる中、最後とうとう万里は村人につかまって生贄にされそうになる。万里を愛し始めていた少年は、罪のない人を犠牲にしてまで生き続ける自分達への嫌悪が募り、村人を阻止、自分の永遠の命をなげうって万里を救う。
すべてのことが片付いたあと、少年は万里とともに立つ広い草原の中、一瞬激しく吹いた風とともに、砂になってかき消える。
「君に会えてよかった」と言い残して。
この作品が哀切なだけで終っていないのは、その後の万里の家に妖精のような面白い子鬼が住み着いたこと。
あの時の縁で引っ張ってきた子鬼たちだ。ケケケとか笑う子鬼と、万里は一緒に住むことになって奇妙に納得している。
このラストは、すべてが幻かと思ったけど、そうではなかった。
すべて砂になって消えたかと思ったけど、そうではなかった。
そんな希望のような、そしてコミカルな味わいで胸に残ったものだ。
つまり、砂になる>不老不死>吸血伝説>なんとなくエロ というあたりでつらなっている。
といっても、曲の全体は儚いなんてことはまるっきりなくて、バシバシギュンギュンバンドの音が密に鳴っているのだから、随分と楽器の演奏も上手になった気がする。(のは気のせいだろうか)