NHKスペシャル | 権力の懐に飛び込んだ男 100日の記録

番組サイトから拝借もやい」(とゆうNPO法人)の代表である湯浅氏が、鳩山さんや菅さんに頼まれて内閣の「参与」になったあとの奮闘記。その日数約三ヶ月で、その後も続けてくれと請われたけれど、どうにもこうにも限界を感じ、ヤル気をなくしてしまったようで、もうやめてしまう、かもしれない。
湯浅氏のがんばりはすごかった。よくあそこまで健闘したと思う。
なんせ、官僚たちの動きの鈍いこと鈍いことったら。
といっても官僚さんたちは別に悪人なのでもないし、悪意があるわけでもない。
湯浅氏に言わせれば「萎縮してしまっている。どうせできっこないと諦めている」人たちだから、結局は「相手の身になって考えない」わけで、そこらをしみじみと述懐した最後の方は、掛け値のない本心からの深い嘆息をつきながらで、決して敵意を露わにしないところが実に品がいいのだけど、見ている方はかなりドタマに来る官僚とか役所とかの体質だった。
湯浅氏に言わせれば、そんな役所や官僚を動かしていくのには世論のバックアップが必要なのだとのことだった。
そこで、以前もリンクしたことのある他のwebページを紹介したい。
いすとりゲーム 野宿=貧困になるのは「自業自得」?
いす取りゲームで負けたとき、負けた人は自分で理由を考え、「努力が足りなかった。だから自分の責任だ」と考えるかもしれない。また、取れた人は「あれだけ神経を張り詰めて頑張った自分の実力」と思うかもしれない。そして負けた人は「今度は死ぬ気で頑張ろう」と思うかもしれない。けれど、どちらにしろ椅子はたらないのだ、という喩えが示されている。
(それでも、椅子取りゲームは「偶然」要素で勝敗が決まるので、格差要因の強い実際の貧困とはまた違うとも)
国家、市場、家族の失敗
これはその次の次のページであるが、わたしは、家族の失敗により精神生活を破壊されまくった人々と接する機会の多い仕事であるから、家族の失敗をまるでフォローできない現在の社会制度は、まったくもって遅れに遅れていると感じている。
経済の貧困+関係の貧困=現代の貧困
同じく次の次のページであるが、まさしく「官僚」なんていう人は、経済では裕福だろうけど、関係の貧困は甚だしいのではなかろうか。実は自分も貧しいとうすうす感じているから、貧困層に近寄ろうとか親身になろうとは思わないのかもしれない。
以上は、WEBでわたしが知る限り、もっとも分かりやすくフレンドリーな「貧困対策をなぜしなければならないのか」という説得力のある説明なので、挙げてみた。
番組の取材班は、オリンピック村で過ごさねばならなかった人たちの個々の内面と事情に肉薄はできていなかった。権力の懐に入った一NPOの人、というあたりがテーマなのだとしても。
個々の人には、個別相談(実際は聞き取り調査に終始し、解決への道筋をつけることはできなかった)(でも後で、半分くらいはやっていた)を行っていたけれど、取材者の熱意は直接は個々の人に向かっていないため、職をなくし、家をなくし、手持ちの現金もなくした人たちが、顔の見えない漠然とした存在として終ってしまっていた。
ただそれは聞いても答えてくれたかどうか怪しいかもしれない。
人は、職があり、自由に何かを買える金があってはじめて、人に心を開くのかもしれないからだ。