人間は放射線を浴びてはいけない生き物なのです / マル激トーク・オン・ディマンド –ビデオニュース・ドットコム– もしくは、「1ミリシーベルト」が意味するもの

■まえふり
原発の事故以降、放射線の恐怖についてよくなされたのは、「正しく怖がりなさい」とか「怖がりすぎず、怖がらなさすぎず」(にいなさい)など、「そんな器用なことができるかっ」という無茶な相談だった。
人のツイッター見てたら「むしろ人間の正しい怖がり方を教えて下さい」というのがあって可笑しかった。
今でこそそんなことはなくなったが、わたしも大昔は、男性という男性全部が強姦魔に見えて怖くてならなかったし、最近ではピンポンならす訪問者がみんな新聞の強引な勧誘員に見えて怖い。もっともこれは50%の確率で当たってたりする。
しかし、「正しく怖がる」という器用な心理状態を、事故後の今は保っていなくてはならない。
というか実は、事故が起きる前から、「原発」というものが存在する以上は保っているべきだったのだ。
ところが、 念のいった「安全神話」 のせいでその機会は失われた。
だからといって安全神話がなかったなら、みんな正しい怖がり方をキープしながら生活し得ただろうか?
わたしは、無理だったと思う。
想像するに、原発近くのある人はキープできず放射能恐怖症に陥り毎日ビクビクしたあげくに不眠症や胃潰瘍。ある人は我慢ならず「原発反対」という市民運動を立ち上げただろう。おとなしく正しく怖がっているだけなんて、人の暮らしじゃないと思う。
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以下、文字起こしではなく(文字起こしは非常に神経を使う作業なのでたまにしかできないのです)わたしの直感的理解と感想が大半なので、ぜひ本編を見てください。月額500円は決して高くありません☆
マル激トーク・オン・ディマンド 第539回(2011年08月13日)
「人間は放射線を浴びてはいけない生き物なのです」
ゲスト:崎山比早子氏(高木学校メンバー・医学博士)
この回は、被曝という事態に対して、あるいはその意味づけをする科学というもの対して、どのような認識を持てばいいのかを追求してくれた。
ことに、科学者によって言うことが違うというのはどういうことか? 科学とは政治や経済から独立したもっと純粋/客観的なものじゃなかったのか? という疑問に答える。
さらに、実はよく知らなかった、「ミリシーベルト」という単位について。
今も、東電や原子力委員会、原子力安全・保安院などなどに対して怒りは収まっていないけれど、あえて怒りの念はわきにおいてこの回を参照する。同様に、乳児幼児をもつ親の心情も今は脇に置いて考えてみる。
Q:1ミリシーベルトというのは、何を意味するんですか?
A:全身にある各細胞に、放射線が一本づつ通るのが、1ミリシーベルト。(成人の場合)全身に細胞は60兆個あるから、60兆本放射線が通る。ただし、DNAに当たるとは限らない。また、DNAの二重らせんのうち一本に当たっただけなら修復できる。
二重らせんの2本ともに当たると切断される。ただ、2本鎖切断でも修復できないとは限らない。
また、一回に100ミリシーベルト浴びるのと、10回で100ミリシーベルト浴びる場合はリスクが違うと言われる。実験的にも期間が長いほど修復される。
(図解入りだと、このブログが参考になる。↓↓
放射性物質~11 by ブログ・万年山にあきふかく)
細胞模式図 by かがくナビ
ということで、何重にも修復の機会があるので(神保さんは「保険がある」と表現していた)、人とはさすがに放射線だらけの中を進化してきた生物の果てだけのことはあると、感心した。それに、幾分安心した。
わたしも1ミリシーベルトの意味することなぞ知らなかったので、なるほどおと深く納得。
ネットにはグレイとシーベルトの関係など難しいことはよく書いてあるが、こういうのは意外とどこにも書いていない。
それにしても60兆個全部に浴びるというのはすごい話だ。数が数だけに、細胞のうちのどれかのど真ん中を通過し、DNAを直撃する確率は、いくら修復してくれるとしても無視できない。
さらに子どもの場合、成長過程であるから、DNAのコピーとそれを設計図にした細胞分裂が盛んに行われている。「年間20ミリシーベルトまで安全」という考えに従うと、全身の全細胞の一個一個に、放射線が一年間で20本ずつ通る、ということで。その中のどれかが、今まさに活発に活動している細胞のDNAを直撃するかもしれないのだ。発がんのシステムは現在の科学はほぼ解明しており、遺伝子の損傷によるものだという。
ましてや100ミリシーベルトまで許容など言い出したら、全身の全細胞いっこいっこを100回も通過なのだ。
Q:どうして学者によっては、100ミリシーベルトまで安全というのか?
A:学問ではなく、経済なり社会なりのレベルで言っている(のでしょう)。
  学問としては、そのような考えは論外。現在、発がんの仕組みはDNAの損傷によると、科学として解明されている。
(ここで図を出し。100ミリシーベルト以下の低線量被曝について「証明」するには、10万人を10年間追跡調査しなければ「証拠」のデータはでず、そんな母集団の大きな調査は無理。そこをわざと利用した言い方をしている。といった意味の説明が入る)
高木学校
崎山氏が属する 「高木学校」 は、市民の立場に立ち、市民の不安を共有することを理念とした科学者(市民科学者)を育てる場であるという。
わたしも今回初めて、高木学校および創設者の高木仁三郎という人を知った。
(たとえば何をやるのかというと、医療被曝問題などがあり、世界中の1/3のCTスキャンが日本にあるそうである)
Q:今、高木さんが生きていたら、この状況の中何をしたと思いますか?
A:(なくなった人の事だから非常によく考え)もっと、海外の人と一緒にしたんじゃないかと思う。海外の科学者から見ると日本は閉じている。彼は、そういうところは、外に向かってやっている人でしたから。
情報が向こうへ行って、国際的な市民科学という立場から、原発を収束させる方向でやっていったと思う。
収束させることが一番なので、そこに集中したと思う。
☆ ☆ ☆
先ほどツイッターで得た情報。
SATURDAY, AUGUST 20, 2011
放射線研究で世界に冠たろうとする山下俊一教授、独シュピーゲル誌とインタビュー
ドイツのシュピーゲル誌のインタビューに応じた長崎大・福島医大の山下俊一教授、いろいろと過去の発言について鋭く突っ込まれています。

最後のほうの山下氏、

シュ:あなたはご自身の数々の発言のため世間で物議をかもしている。あなたを刑事告発したジャーナリストがいるし、反原発の活動家は……
山下:……そういう人たちは科学者ではありません。医師でもなければ放射線の専門家でもない。研究者が研究を積み重ねてきめた国際基準についても何も知りません。皆さんが噂や雑誌や、ツイッターの情報を信じているのを見ると悲しくなります。

山下氏は、科学者や詳しい専門家が多く山下氏を批判しているのを知らないのだろうか?
仮に山下氏にたくさん譲歩し、深刻になっている福島県民を励ましたいから、と解釈しても、もっとマシなアドバイスはできただろうし、今もできるはずだ。
なのにこの人は

シュ:どれくらいの人が被験者になるのか。
山下:200万人の福島県民全員です。科学界に記録を打ち立てる大規模な研究になります。政府は原発事故の被害者に対する補償金について先ごろ決定を下しました。そうした補償プロセスを通じて、県外に避難している住民の方々にも連絡を取りたいと考えています。

と、関心の方向が癌予防やリスク低減ではなく、実験の方へ行ってしまっている。
いくら「避難」や「疎開」が大変だからといっても…
山下氏は、悪人というよりも、どこか奇態な精神構造をしていて、独自のワールドを完成させてしまっている。だから誰の話にも耳を貸しそうにないのだ。しかも福島に移住して、本格的にマッドサイエンティストとして活躍する気だ。
とてもじゃないが、この状況には、誰か第三者が介入しなければ。
必ずしもぜったいにみんな癌になるとかならないとかではなくても、科学者一人はきつい。
☆ ☆ ☆
だんだんと頭がクラクラしてきた。
さらに今見たら、
非常事態!実はもう手がつけられない!共用プール付近から水蒸気が噴き出している〈原子力緊急事態宣言>
http://www.asyura2.com/11/genpatu15/msg/714.html
投稿者 広島県内 日時 2011 年 8 月 21 日 21:42:07:

↑もういやだ…。
しかし、以前よりは、正しく怖がれそうな気がしてきた。
というか、正しく怖がると正しく怖がらないより、もっと怖い気がする…
☆ ☆ ☆
さっき試しにサイエンスポータルというところ見たら、元原子力安全委員会 委員長代理 松原 純子 氏というひとの文章が載っていた(掲載日:2011年5月7日)
政府系の人にしてはマシなことを言っているように思ったけど
「『どんな微量でも放射線は発がん性の影響がある』という前提は現実的でない」などと、やはり時代遅れなことが書いてある。崎山氏の話を参照すれば、幾重にも修復のチャンスはあるとはいっても、「影響がない」とはいえない。
「市民科学者」であるのとないのでは、頭のさえ方が違うのだろう。
この人の立場としては、ちゃんとした事を言っている気はするが…
「(原発を作る)工学(管轄:経済産業省)にとっての放射線の量の感覚にくらべ、放射線防御の立場(管轄:文科省)にとってのそれはきわめて微量である」というのは、いかにヒトにとっての原発が扱いがたいものかをあらわしている。
☆ ☆ ☆
正しい怖がりのための材料が、そろってきた。
1ミリシーベルトの定義にしろ、バズビー氏の「空中などの複数の核種」、さらには、食べ物に注意する必要性、あるいは
あと必要なのは、データだ。
野菜や魚介、卵、牛乳など、ちゃんと計測して数値を出さないといけない。
チェルノブイリでは、「今これを食べたら10年後に死ぬ」と言われても、貧しくて食べ物が他になく
「これを食べないで今死ぬよりも、今これを食べて10年後に死ぬ方を選ぶ」
といって、知っていて危険な食品を食べたという。
(広川隆一氏がニュースの深層で語っていた)
それくらい貧しくて、選んでいることができない人が多かった。
日本なら、そこまでは貧しくないはずだ。
内部被曝を最大限へらすようにすれば、かなり被害は減らせる。
崎山氏も、この点、図とともに教えていた。
広島、長崎、チェルノブイリの人々がすでにいろいろな事を教えてくれている。
その知見を生かせないでいるのは、日本だけだという。
山下氏、どんな「実験」をする気にしろ、そっちのほうが先決ではないだろうか!!
☆ ☆
崎山氏牛肉からも高濃度の放射性セシウム検出 放射能が身体に与える影響を考える 崎山比早子 元放射線医学総合研究所主任研究員・高木学校メンバー インタビュー (ダイアモンドオンラインの7月15日インタビュー記事。