前回続き私的メモ。その2.SPEEDI
2.SPEEDI
原発事故以降、それまで縁のなかったタイプの色々な情報に接触してきたが、中でも最大のお気に入りは
→追跡 原発利益共同体 毎年税金60億円 電通・博報堂・産経新聞社など事業請け負い 「安全神話」刷り込み
(しんぶん赤旗より)
気に入りすぎて、何度もこのブログからリンクしたし、もちプリントアウトして手元にもっている。
だって、こんなにも見事にうまくいった事業ってすごくない?? と感心するからだ。
(もう少し詳しくは「原子力安全神話はいかにして作られたか」経済評論家・内橋克人氏(3月29日) について書いてあるブログ)
もちろん、お気に入りと表現するのは反語であり、実は不快で不快でならない。
のだけれど現実問題として、まんまと罠にはめられた自分がいる以上、自虐の念を込めフェイバリット扱いし殿堂入り決定なのだ。
こんなにうまくいくなら、同じ手法で他の有意義なことをやったらどうなんだ? と思う。
この手法で、もっと経済が活性化する何かとか、もっと少子化が解消する何かとか、もっと自殺者が減る事業とか。こんなにも見事に洗脳&支配し、大多数の人間に原発は安全だと信じ込ませることができるのだから。
しかし、原発安全神話にとって目障りなものもあった。
原発反対の活動家や知識人のことではない。彼らのことも目障りだったろうが、身内の中にこそそれはあった。
SPEEDI、すなわち緊急時迅速放射能影響予測ネットワークシステム、英語でSystem for Prediction of Environmental Emergency Dose Information
管轄は文部科学省 原子力安全課であり、SPEEDIを説明するページ「SPEEDIとは」を見るともっともらしいことが色々書いてある。今だに
万一、原子力発電所などで事故が発生した場合、収集したデータおよび通報された放出源情報を基に、風速場、放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などの予測計算を行います
などと万が一がすでに起きてしまった事実に1バイトも言及しない他人事感を貫く姿勢は、腹をたてるエネルギーすらわかない。
このSPEEDI、世間の人でどれくらいの人が知っていたのだろうか? わたしはといえば全くもって知らなかった。
もしもわたしがSPEEDIに詳しい人にその存在を教えて貰ったとしたら、
「やっぱ原発って安全とは言い切れないんデスね」という感想をもっただろう。
それに対してSPEEDI側の人は「いや、万が一にも事故があったとしても、SPEEDIというシステムがあれば安全なんですよ」といい、SPEEDIの使用法や開発履歴などとくとくと語り出しただろう。
が、わたしは「だって、予測したとしても放射性物質は拡散するんでしょう? そしたら被曝するんでしょう? やですよそんなの、やっぱ原発やだ」となるだろう。
「いや、だから、拡散するとしてもその方向を予測すれば、そっち方向に行かなきゃいいんだから。反対方向に行けば被曝しないんだから。安全なんですよ!!」と言い返すだろう。しかしわたしは「ま、そうだとしても、つまり、そこまでしてこういうシステムを作ると言う事はやはり原発は事故を起こす可能性があるってことですよね。つまり、安全とは言い切れないって事ですよね?」
となり、SPEEDI側はイライラしはじめ「だから!! 万が一に備えるのがこのシステムなんですよ。原発が安全であることに全然変わりはないが万が一ってことで備えるんですよ!!万が一って言葉を知らんのかあんたは」と切れるがわたしはやはり、
「やっぱり、万が一には事故、起きるんですね」
☆ ☆ ☆
先月17日、わたしのタイムラインに仰天するツイートが入った。(その日のツイログ)
SPEEDIの拡散予測結果、事故直後の14日に文科省は、外務省を通じて米軍に渡したというのだ。
14日は三号機が爆発した日で、翌15日に大量の放射性物質が降り注いだ、というのは後になって分かったことだ。
14日は、関東以北に住む日本人にとって真実、予測が必要な日だった。
本書によれば、5月の会見で細野氏は「パニックをおそれた」といいわけしたそうだ。
本書のSPEEDIという章、読んでいると「どこまで人をバカにすれば気がすむんだ」と、ハラワタが煮えくりかえる、煮えくりかえる。
ガソリンの不足や交通渋滞で避難が無理だとしても、屋内(できればコンクリート)へ退避することで被曝量を減らせた。
地震と津波で常時とははるかに断絶した異様な状況下だったとはいえ、中村某などメルトダウンを示唆したり、文科省は米軍にSPEEDI結果を渡してみたりと、冷静だったのである。
SPEEDIに関しては、官僚も政治家も新聞社も隠蔽と誤魔化しに動いた様子が、本書によってうかがえる。
先ほどハラワタ云々と書いたが、本書は事実のみを冷静に綴っている本であり、感情的な表現および故意に怒りを誘発させるような書き方はしていない。
SPEEDIに関しては取材を重ねても、どうして有効に生かされなかったのか、またその責任の所在がどこにあるのかは、まだ分かっていない。
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当記事は間接話法を用いてるため、もとの本書をあたることを推奨いたします
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