新国立劇場:タージマハルの衛兵(英題 Guards at the Taj )

12月23日のチケットはまだ間に合いそう。おすすめ劇!!

上演中の劇なので、観劇予定の人はこの下見ないでください!!

この劇、傑作だと思う。
この1,2年の間は劇ってだけで「ほおお」と感心して有り難がっていたところがあるのだけど。
この劇見て、生まれて初めて、笑いってものが、発狂を逃れるための装置としてあるのだと実感した。人は、狂ってしまわないために笑うんだと、理解した。

得がたい体験ができたと思う。
ただし、その分心臓にちょっと悪い。
メンタルに自信のない人にとっては警戒レベル3くらいある。
それくらい、血みどろ場面が自律神経とホメオスタシスを揺さぶる。
ヒドイ。
なんつっても、「タージマハル以上に美しい街を作ってしまわないように」と、タージマハルを作った職人やら土木工事人やら左官やらの手首を切り落としてしまう。本数にして4万本、人数にして2万人も。舞台後方で手首が山積みになっているのを見て、命じられるまま死んでいった特攻隊員の死体に似ていると思った(そういう記事を書いている最中だったこともあって)
特攻もそうだけれど、わたしもわたしの子ども達も手首を切られる2万人の側にいる。そう実感されてしかたないから、そのあとのセリフがぜんぜん頭に入らなかったのは困った。登場人物(ふたりしかいない)たちは、2万人もの手首を切ってしまったことの衝撃を忘れるために必死で妄想を膨らませ夢を語りファンタジーに逃げて、たくさんしゃべっていたけど、それが頭に入ってこない。

紋切り型みたいで使いたくない言葉だけど「社会の格差」「格差社会」が描かれている。そうでないなら、建築士(天才とうたわれ、人格もすばらしい、名士の誉れ高い人物。名前失念)一人を殺すなり、手首を切ればすむことだ。職人が大勢いても優れたarchitectがいなければスゴい街はできない。architect一人がいくらすごくても職人や大工がいなくては出来上がらないとはいっても。だからこそarchitectは2万人と一緒にタージマハルの完成を祝いたいと言ったのだろう。

言うなれば雇用者と労働者の理想の形だ。どうやら代々世襲しているらしき皇帝陛下はその関係に嫉妬した、というのもありそうだ。
見る側としては、被害者的立場一辺倒で見れたわけではない。うまく立ち回って皇帝陛下の側に付けば、おいしい思いができるのだ。となれば必死になる気持もわかる。自分ならどうするか、バーブルのような形で頑張ってひたすら規則を守るのか、それともフマーユーンのように思い切った決起に踏み切るのか・・・ 自分にそんな勇気があるか・・・・

インフォ
(158) Guards at the Taj – YouTube
各国で?上演された Guards at the Taj 

Review: ‘Guards at the Taj,’ Two Ordinary Guys Ordered to Do the Unthinkable – The New York Times
ニューヨークタイムズのレビュー。皇帝陛下とトランプ大統領を結びつけたラスト

Rajiv Joseph – Wikipedia
この劇の原作者、ラジヴ・ジョセフのwikipedia(英語)

新国立劇場のタージマハルの衛兵のページ

主要な動画三編が入っている。上から演出の芸術監督・小川絵梨子、ラジヴ・ジョセフの舞台を見てのコメント、二人の役者 成河、亀田佳明

 


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