オペラ座の怪人 を観てきた

 オペラとかバレエみたいなエンターテイメント産業って、いつ頃からあるのだろう?
 『オペラ座の怪人』は1870年のフランス、それもオペラ座(いわくがたくさんあるのだけど、それはおいおい明かされる)という劇場を舞台にした映画。
 ただ毎日日々生きるということが、人生という名の牢獄であると、最初に思い始めたのはその頃の人々かも知れない。けど、夢をつくり夢をみせる仕事はよほどのすごい才能の持ち主でないかぎり、「明日などなくていい、今日すばらしい夢をみれるなら」と思える者しかなれない仕事だから、貧富の差をたくさんうむし、たくさんの人が「明日」を失う。
 それでも、「マスカレード」など劇中劇のようにして夢の素晴らしさを存分に見せてくれる場面が、映画中で最大の白眉だと思う。
 いろんな見方があると思うけど、わたしは「女の生き方」映画としての面白さを感じた。
 ふたりの男性はそれぞれふたつの人生コースを象徴している。
 彼女はけして選択を間違えなかったと思う。
 でも、歌への夢はいつまでも燃えくすぶり続けたに違いない。

 映画が描かなかった1917年の彼女の没年までの人生を想像しているうちに、映画のタイトルロールは終わって、館内は明るくなっていた。他の人たちも色んなことを想い巡らしていたのか、誰も席を立っていなかった。これは珍しいことではないだろうか。(いつもは音楽の途中で席を立つ人が多い)

 「だから、女にとって一番いいのは、才能もあって男にも恵まれて夢のすべてを叶えることだよね」
 って思うけど、この映画はあくまでファントムの映画だから。

 そして女にとってもっといいのは、昼と夜の両方を貫く夢の中に生きられることではないかな? なんて、うっとり夢みつつ思う。

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