失踪日記by吾妻ひでお

話題の書『失踪日記』を読んだ。WEB上でもたくさんの人が話題にしていて、あの時(あの時ってのはうーーん、20年くらい前かな)あのギャグに(わたしはロリコン系にはさほど反応しなかったからそれは置いても)笑った人たちが、当時は自分以外にそんな人がいるとは思えなかったのに、空中庭園で予期せぬ再会を果たしたかの如くの趣だった。(インターネット万歳かも)
あの頃の世相のつまらなさ、夢と希望がすべて費え去ったあとの空虚感(と勝手に回想してしまうが)、バブルだか何だかの浮かれ騒いでいる無意味な感じ。それらを無化してくれる唯一の魔法は吾妻ひでおだったかもしれない、とすら思い起こす。(ちょっと文語調?)

でもやっぱ吾妻ひでおってえらい。漫画家なんて漫画家以外やれる商売はなくて(よくしらんけど)売れなくなっても描けなくなっても、学習漫画みたいの描いたり不本意すぎるエロ漫画描いたりして結局漫画の仕事(つまりは文明の恩恵とオタク文化の安楽)にしがみつくんだろうけど、漫画家のアシスタントすらやらないで(もっとも吾妻ひでおほどのジンブツをやとえる漫画家もいないだろうけど。それにスキル的にアシ仕事は無理だって本人言っているけど)いっきにホームレスなんて。
ホームレスと同じくらいすごいと思ったのは吾妻さんがガス配管工の仕事をしていたエピソードで、ホームレスには人間関係ないだろうからある意味「楽」そうだけどガテン仕事にはたくさんあって、それすらやってしまったこと。そんな中、ヘンな人や困った出来事を前にタバコ姿で苦笑する自画像は、ひょっとしてその後の日本人のメンタリティを決定づけるくらい影響与えたような気がする。たぶんおおげさだけど。でもそうおもってしまうくらい、あの苦笑う顔が懐かしい。
というようなこともあるけど、とにかく絵が丁寧に描かれてあって、それが何より一番大きな特徴だと思った。
bluegreen
  • bluegreen