まぶた (新潮文庫)  短編集。収録作は八編

  • 飛行機で眠るのは難しい
  • 中国野菜の育て方
  • ま  ぶ  た
  • お料理教室
  • 匂いの収集
  • バックストローク
  • 詩人の卵巣
  • リンデンバウム通りの双子

今、こうやって目次を再現しただけで、肌を戦慄が走ってプルプルと身震いがして軽く発熱してそのまま枕に顔をうずめて眠ってしまいたくなる。自分がどう眠るのか、どんな眠りの召使いが森の奥からやってくるのか、確かめてみたくなる。ぜったい今夜実行しよう。でもその前に寝入ってしまうだろう。どうしてもわたしは不眠みたいなのと無縁なのだ。それでも、数日間ぐっすり早々と寝入ってしまうと、4日目くらいに不眠の夜が訪れる。数日間奴隷のように睡眠をむさぼった褒美なのだ。

『まぶた』もそんな贅沢な不眠の夜に読んだ。読みながら途中でちょっとブランデーも飲んだ。なんでブランデーなんかがうちにあるのかというと、患者様がお読みになっていた女性週刊誌を見せて貰ったら、アンチョビーフィレを使ったパスタソースが載っていて、それがすごく美味しそうで、レシピをメモした。スーパーでメモを片手に買い物をしてアンチョビーフィレがあんなちっぽけな缶詰なのに380円くらいするのにたまげた。材料にはブランデーも入っていて、そちらも800円もしてちょっとしか使わないのに馬鹿らしかったけれど、レシピ通りに作らないで不味かったらイヤなので買った。その残りがあってチョビチョビ飲んでいるのだ。ブランデーは飲み過ぎると翌日頭が痛むのだ、ということも今度知った。あぁそうか、だから「詩人の卵巣」に出てくる恋人は酒浸りなのか? 酒には強制的に眠りにつかせる力がある。けれど、センモン的には決して「よい眠り」とは言えないと聞いたことがある。あの男は、きっとよい眠りを眠っていない男なのだ。

この短編たちにはオチは期待してはいけない。オチが今にも訪れそうな雰囲気は漂うけれどそれは錯覚だと思ってほしい。わたしは作者ではないけどお願いする。でも「匂いの収集」にはあるかな? あの短編は爪を切ってもらうシーンがわたしは好きだ。今度また不眠の夜が来たら読み返してしまいそう。日頃「眠るまい眠るまい。眠くてすぐに寝てしまうことは日々の下僕である証明なんだから」と睡魔と無意味に格闘することの多い自分。「90分周期でレム睡眠とノンレム睡眠が訪れることを考えれば90*Xで3時間、4.5時間6時間…、6時間寝れば充分」などとせこい計算もするが、睡眠なんて好きなだけ山盛りたくさん(タダなんだし)むさぼればいいのだ。と思った。

追伸:とても『まぶた』の魅力とよみどころを伝え切れていないよ…