奇跡/夏陰/サナギ

この前、ヘッドホンのエージングをしている話しを書いた。
エージングは着々と進んで、どんどんいい音になっている気がする。
エージングに終わりはないらしいので早まったことは言えないが、このHP830に今感じているのは、けっこう鈍重な音を出すな、と。
浮ついた感じがなく、悪くいうと飛翔感がなく、よく言えば地に足が着いている感じだ。
しかし、バンドの音を出すのはどっちかというと不得手のような気がする。
得意技はボーカル+アコースティックギターの組み合わせのような気がする。
すべて気がする、なのはそういう気がするだけだろう。
そんな中、ひさびさに引っ張り出して聴いたスガシカオの『SMILE』。
スガシカオの歌詞にふさわしい細やかな声の振動が伝わってきた。
アコースティックギター(だけではないが)との組み合わせで、音の空間もホワンと心地よく響いた。
『SMILE』ってこんなにいいアルバムだったのか。
いやもちろんいいとは思っていたわけだが、ここまでとは思っていなかった。

そうしたら、深夜のテレビで、スガシカオのニューシングルのCMをやっていた。
CMによるとこのニューシングル、驚いたことに、高校野球のテーマソングらしいのだ。
『SMILE』(2003.5.7発売)のあとには『TIME』(2004.11.17発売)があって、そちらがどうなっているのかよくは知らないわたしに言う権利もないっちゃないが、『SMILE』に没入していたわたしは大げさに言うとひっくり返った。
え こ、こうこう野球ですか…?!
だからって『SMILE』がことさら爽やかじゃないとか、正々堂々としていないとか、そういうのじゃなく。
(以下略)
これはぜったい買わなくちゃと思ったのは、高校野球は関係なく、あたらしいスガシカオの曲を今すぐにも聴きたい、と思ったからだ。
で、買った。
聴いた。
・奇跡
ポジティブ。それもそこらにゴロゴロ転がっている空騒ぎみたいなポジティブとは違うやつ。
・夏陰~なつかげ~
踏みつぶした靴のカカトを、ちょっと考えて履き直した時のこと、思い出した。とても鮮やかに。
・サナギ<theme from xxxHOLiC the movie>
スガシカオの歌は状況や心理をちゃんと描いていることが多い。
なのに、これは漠として杳としてつかめない。
(何かのアニメのテーマソングらしいので、そのせいか。)
むしろ、それがいい方に作用して、聴いている自分のあれやこれやに当てはめ、思いを巡らすことができる。
とても長く深い愛憎の対象だったあなたがいて、私はサナギなのだ。
愛も憎しみも吹っ切ることはできない。
できるのはいつか来るかも知れない「そんな日」を夢見ること。
そんな日に、すべてを託すこと。
そんな日がどんな日なのか、くっきりとしたイメージを結ぶことはできないけれど。
美しく切なくファンタジックで、この曲自体が、サナギからかえって空に舞う蝶のよう。

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