1980年の日記

パソコンを置く位置が悪いのか、やっていて肩がやたらと凝るので、違う場所に置くことにした。
といっても、狭い住空間を220パーセントくらいの密度で生活しているうちなので、新しい場所をみつけるのは至難だった。
なんとかみつけたのは、5段ロッカーの3段目で、荷物をどかしてパソを置きキーをたたくと、使う筋肉がかつてわたしが使ったことのない部位の筋肉だったので、すごく楽な感じがした。

とそんなことしながら掃除もしていたら、1980年に書いた日記が出てきた。
不肖わたし18才である。

読むと、自分で覚えているよりけっこう面白かった。
しかし、この頃のわたしは当然のようにして煮詰まっていて、当然のようにして青春と無縁仏だった。
それでも感心したのは、ネットもブログもないこの時代の日記なのに、ちゃんとカテゴリー分けしている事だ。

たとえば、わたしの世代だとありがちなのだが、渋谷陽一のサウンドストリート(というラジオ番組。NHKFM)を聞いた日のメモを、「SS」とカテゴリー分けして、渋谷さんが何を言った、何の曲がかかったと、逐一メモしているのである。

たとえば、1980年SS、最初の放送は1月10日木曜日で、わたしはそれを「ききそびれた」とかで、翌11日のSSをメモしている。


2ルー・ルイス
2イアンマクレガー&トラブルメーカーズ
2ヒロシマ
2ニール・ヤング

頭の「2」は、おそらく2曲かかった、という意味だろう。続いて以下のように記している

今日の渋谷クンのお話し
 イアンマクレガーはキーボード奏者
 もともとはめだたない存在だったがいい資質をもっている
 (→こういった曲はいつきいても新鮮なカンジがしてズルイ)
 ヒロシマのこのアルバムは日本ではいつ発売されるかわからない。
 このグループのことはなんかわからなくてパンフをみると
 日本的楽器に興味をもち、パーカッションがうちわ!!
 というので渋谷氏ズッコける。
 ニール・ヤングは彼にとってafters Goldラッシュなんだ
 そーで、ニール・ヤングは秀れたミュージシャンだと思うが
 好きになれないのだそーで なんか
 カントリーアンドウエスタンがやなのだそーー
 彼がその昔ディズニーランドに行ったとき、ゆうぐれだったが
 舟にのってたら このちょうしの曲が流れ そのとたん
 まわりのアメリカ人はシーーーンとしてしまい
 なにやらうつろな物思い深げな顔付きになり彼はやはり
 こういう曲はアメリカ人にこの手のはんのうをよびおこさすものなのだと
 国民性の違いを感じたのだそう。

と、平仮名ばかり多いのは、パソと違って変換してくれないのだから仕方がない。

それに、こうやってみると、わたしがもんのすごい渋谷シンパだったみたいでイヤだけど、まーある程度はその通りだ。
けど、自分の名誉のために書くと、何も渋谷さんのいいなりになっていたわけではない。
その証拠に、日本のロックを特集した3月14日、SSはアナーキーやRCサクセション、フリクション、誰がバカやねんロックンロールショー、突然段ボール等を紹介しているのだが、その日わたしは自分の感想としてこう書いている。

アナーキーとRCサクセションが良い
渋谷氏は割と批判メだったけど私は気に入った。
素人くささもいいし RCの渋谷氏いうところの”どろくささ”も私は好きだ

テクノポップは好きだけど ”コピー”なんか特にイミないなーー
と思っちゃう。そんな話しききたくないって 詞つーか詩が悪いのね

と、一応自分の感性を大事にしているところがエライのではないだろうか。
ちなみに、”コピー”とは、その時紹介されたプラスティックスというバンドの曲である。

うーーん、でもやっぱエラクないのは、いつわたしテクノポップ好きだったんだよ? ってあたりで、わたしはテクノは好きだった過去は一度もないはずなのに。
ここらへん、時代の潮流にちょっと媚びているって思う。
不特定多数が読むネットの日記ならともかく、紙の日記など自分しか読まない。
なのにそういう微妙な嘘をついている。

嘘であり、自分の中に第三者的な観客がいる、ということでもあるか?
これは人間心理としてとても面白い。
ネットであろうがなかろうが、「わたし以外の読者」がわたしの中にいるというのは。
でも、ちょっと気をつけようと、思う。

 

2006/03/21追記:
なんかしつこいけど、よくよく思い出したら、少しは好きだった気もしてきた。
そういや、たくさんかかってたもんね

 

bluegreen
  • bluegreen