
- 作者: 鹿野淳,L’Arc~en~Ciel
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2005/09/17
- メディア: 単行本
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小説本の場合は、ともかく小説が書いてあるのだろうと最初から分かるのに対し、こういう本は実際に手にとってみないことには、なかなか中の様子は分からないものだ。
ということで、そっちから紹介する。
本の構成
■Prologue
2005年7月、8月に行われたライブの楽屋裏ルポ。7ページ
■自由への招待
1:著者によるラルク賛
2:シングル「自由への招待」についての、各メンバーへの個別インタビュー。順番はhyde、ken、tetsu、yukkiで、以下5項目も同じ
■Killing Me
1:著者によるラルク賛。(おもに「必殺のリフ」について)
2:インタビュー
■New World
インタビュー
■AWAKE
1:著者によるラルク賛と評
2:インタビュー
■Link
インタビュー
■Exclusive interview
2005年8月2日、3日に行われた、この本のための独占インタビュー
・写真6ページ(カラー。それぞれの4枚。一緒に写っているもの見開き1枚)
その他、インタビューの合間のスナップ写真のような、そういうのはひとつもないので、ただひたすら読んでいくしかない作りとなっている。なので、ひたすら読んでいった。中には既読のものもあったけれどそれほど気にならなかった。というのも、既読中ネットで読めるのはyahooミュージックマガジンなのだけど、やはりあれはダイジェストしすぎでつらい。突然「無償の愛に目覚めたちゅうか」(h談)と言われても……というのが、なくもないので。
だからといって、こっちの長編だったら、「なぜ、いつ、どうして無償の愛に目覚めたんですか?」というあたりの聞き込があるかっていったらないので、やはりよくは分からないのだが。(そこまで根掘り葉掘り聞くべきではないものね。うんうん)
☆この本が生まれたわけ。もしくは「肝」。
(前略)
・・・・・・・敢えて言葉を選ばずに書けば ・・・・・・・まだこのバンドのことを「本物」だと思っていない人は多いこととと思う。(中略)このバンドはとてもディープなリスナーをたくさん抱えている。なぜか? とてもシリアスな音楽を量産しているからだ。(中略)にも拘らず、ラルクはサザンやミスチルと比べるまでもなく、まだ圧倒的な音楽集団というイメージが確立されていない。
と、鹿野氏は「AWAKE」の章で語る。続けて「どう考えても、これはおかしい」ときて、その後もいちいち納得のできることを書いている。いうなれば、ここがこの本の生まれたワケ、といえるかもしれない。
だけれども疑問なのは、彼らは、サザンやミスチルの場所に行きたがっているのだろうか? ということだ。
わたしも真似っこして・・・・・・・敢えて言葉を選ばずに書けば ・・・・・・・彼らの魅力は「疎外」を疎外しないところにある、と感じる。それが他のバンドやアイドルとは決定的に違うところだ。ふつう、そんなことをしたら、疎外の体現者のようになって、そのまま誰にも相手にされないか、されてもたいした売り上げはないまま終わるはずだ。けれど、彼らの場合はどういう要因でか逆の方に作用している。結果として、彼らは、あからさまな勝者の椅子に座らないですんでいる、もしくは、座れないでいる。
「どう考えても、これはおかしい」っちゃおかしいのは賛同する。しかし鹿野氏には、この事態を打破する(気があるのだとして)ためにあまり頑張らないでほしいとも、思う。
☆そうはいっても彼はこう語っていた☆
ところが宣伝とは無関係に答えたという「Exclusive interview」の中でhydeはこんなことを言っていて、ちょっとしたショックだった。
(前略)
ラルクの曲にはいい曲がいっぱいあると思うんですけど、でもそれが日本国民みんなに届いてるかっていうところに疑問はあるんで。もっとみんなに届くような名曲がたくさんできるといいとなと思います。
うううーーん。そうかぁ。そんなことを思っていたとは。多分にメンバー愛で言っているのかなとは、続きを読んでいくと思うものの、そう思っているのだとしたら違う方向がいいのかな? とか、わたしが考えてもしょうがないとはいえ、考えてしまった。
ここの部分に限らず、hydeインタビューが一番読んでて安定していて、ひるまず怖れず常に正しい答えを導こうとする在り方に、感動した。ロックオデッセイについても、著者はうまいことゴニョゴニョと誤魔化してくれているのを、率直にひとことコメントしている。
☆むしろ音声で聞きたいtetsuインタビュー☆
そこへいくとtetsuさんは、「Exclusive interview」になったとたん(というかそれ以前からか)に好き勝手言い出していて可笑しい。ところどころ誘導尋問に近いんじゃないかとすら思うおしゃべりなこの著者とタイマンはれるのは、彼だけではないだろうか?
(前略)
●今話してもらえることってないですか。
「何一つないです」
●………。
(後略)
と変なところを引用してしまったけれど、三点リーダーを三個も打って絶句している姿が可笑しいので、再現してみた。(warning:ここが一番よかった箇所ってわけではなく。どっちかというと「大体僕コミュニケーション取ろうとしないタイプですからね。正直嫌いです。」のが)
だんだん鹿野さんも、幼児期のことまで聞きだして、インタビューというより問診か精神分析でもしているシチュエーションへ。これでtetsuさんのトラウマか何かが寛解して人格が新しく生まれ変わったら、鹿野さんは稀代の名インタビューアーってことになるだろうけど、そういう気配はまったくなし。
あとは、なかなかメロディの時代とはいえない昨今についてもちょっと語っていて、tetsuにとってはどうでもよいことかもーだけど、興味深かった。
☆音楽全体へ向けての扉。yukkiインタビュー☆
yukkiさんと鹿野さんて気でも合うのか、実に衝突感も摩擦感もなくスラスラと応答しあっている。そればかりか、著者は何を思ってか「yukihiroさんとなら365日24時間一緒にいられる」とわけわかんないことを言ったり。これにはyukkiさんも相当引いただろうけど、「嬉しいっちゃ嬉しい」と、微妙にフォロー。やさしい。
この方へのインタビューは、心理的なものよりもまず音楽的な話題となり、誰がとっても安心して読めるものが多いのだけど、その中でも特に饒舌に喋って固有名詞もふんだんに出て、活き活き語っている気がするので、鹿野氏お手柄。
特に、New Worldの歌詞を作った時のこと(p112から113)
すごくよいです。(引用してもいいんだけど、もったいないので)
☆これからの音楽性を占うkenインタビュー☆
実はまだあまりkenインタビューは読んでいなかったり。なんだかあぶなかっしい感じがして、たとえば、売れるもの作らなきゃっていうようなプレッシャーをヒシヒシと神経症的に感じている人って感じで、それはわたしの気のせいかもしれないし、立場上当たり前なのかもだけど、ちょっと読むのつらい。
でも、鹿野さんはちゃんと分かって受け止めている様子だから、それは良かったなと思った。ほんとうに、一番理解されなきゃいけない人のように思えるから。
●はい(笑)。たとえ「今までと違う!」って指差されようとも、当分は楽しみましょう。
「…………あぁ、今ちょっと救われました(笑)」
(「AWAKE」より)
ここ読んで、鹿野さんていい人だなと思った。やっぱ「今までと違う!」と言われちゃうもんなのだろう。わたしも無意識に「今まで」のようなのを期待した頭で読んでしまうのか、素直にインタビュー、読めていないのだ。
そういえば、ken作曲の代表曲と思われる「花葬」も、今年平成17年がくっついてバラバラに散らばる花びらだったし、あと、あれに英詩をken自らが付け足していたらしくて、たった今歌ネットで知ってびっくりした。
gravity is on the increase as a time goes by my body returns to the earth there is sky up in the air my body is in your sky and your life is in my cosmos we never come close to each other but here we exis as it is..... by ken
まとめ
以上、完全読破しての感想ではないので、ザザザとしたファーストインプレッション。
ホントの中身は、もっともっと濃くて厚くてhotなので、ぜひみなさまもお読みください。ただし写真に関しては、さほどの旨みはなくて、うーーん寿司でいうとトロではなくアジかタマゴ。いや蝦蛄? 赤貝、ひらめ
(後略)