パスワード忘れた

またまた携帯で小説が読みたくなって、電子書店へ行き「購入」ボタンを押したら、なぜだかわたしのプレミアムパスワードはロックされているという。解除するにはauのお客様センターに連絡しなくていけないらしい。
そういえば、何かを買おうとした時、パスワードがうろ覚えだったもんだから、デタラメに何度も数字を入力したことがあって、あれがまずかったのか。あーあ。auのお客様センターに連絡なんて面倒くさい。

仕方がないからタダでDLできるものはないかと探したら、ドストエフスキーの『鰐』くらいしかなくて、DLして読んでいたら、鰐が途中で*という他の動物になってしまったのだった。
しばらく*が何だか分からないまま読み続けた。

*は唐突に主人公の友人のイワンを飲み込んでしまう。
アッとびっくりイワンは死んだのかと思ったら、*の腹の中で生きている。
そして腹の中からロシア経済についてなどゴタクを並べるという、予想に反してお茶目な展開となった。

主人公はとりあえず友人のイワンを*の腹から出そうと、*の持ち主で、*を見世物にしているドイツ人に談判する。しかしドイツ人にとって*はメシの種。しかも、イワンが腹の中にいることで珍獣度はいっそう高まり、ロシア中から見物人が押し寄せて、断固として*の腹を裂くのを拒否。

いっぽうイワンときたら、*の腹から出ようとはせず、いかに*の腹の中が居心地がいいか、むしろ哲学的思索にふけるのにふさわしい場所かと自慢しはじめる。主人公にしてみればイワンくるったーという感じだ。そのあと、金の算段も兼ねて上司に相談に行ったりする。しかし、上司とて、金なんかそうそう出したくないのでノラクラする。一方、主人公はイワンの妻エレナが可愛いものだから一緒に「コオフイイ」を飲んだり、「己はあいつを愛している」と独白してみたり、かと思うと「愛しているといっても父のようにだ」と言い訳したりで忙しい。「父の接吻は頬に」と言ったかと思うと「エレナの赤い唇が愛らしい」とか「歯がかわいい」とかで支離滅裂。エレナはエレナで主人公に気があるのかなー? と思わせて他の男と夕飯を食べたりしている。

イワン、とうとう*の腹の中に「妻も呼びたい」と主人公にわがままを言い出す。まったくあきれたイワンだが、エレナが他の男と夕飯食べているのが面白くなくて、そうと伝言すると、エレナは泡ふかんばかりに拒否も拒否。この場面が一番面白かった。そんな感じで、全員一癖もふた癖もある人物像なのである。

しかしともかくやはり気になったので、*をちゃんと調べることにした。
*は見たことのない漢字で、PC上に再現するのに手間取った。
がんばって出して調べたところ、なんと、やはりそれもワニだったのである。

だったら紛らわしいなぁ、鰐で統一すればいいのに。やはりあれか、アリゲーターとクロコダイルの違いなんだろうか。仮にそうだとしてもドストエフスキー氏はどっちでも気にしていないだろうに。

しかし、何が言いたいのかかなり難解な小説であった。
後半、ラストスパートでもかかったみたいに旧字体の漢字だらけになり、ますます難儀した。*だけではなく「猿」も出てきて「猿」も何事かの隠喩のように使われているのだが、よく分からなかった。
疲れた。やはり、今度こそお客さまセンターにtelして、パスワードをゲット、本来DLしようとしていた『官能小説家』(by高橋源一郎さん)を読もうと思う。一刻も早くそうしよう。

 

*=鱷 ←出るか?

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