雨ばかり降る

新宿武蔵野館

ザーザーザーザー、シトシトシト、ポツポツポツポツポツポツ…
音の大きさと激しさとリズムを変えながら、ときにロック、時にフォーク、時に演歌調って感じで雨が降る。
もういつから始まったのか覚えていないくらい雨の日が続いている。

それでも雨足の弱くなる時があって、子供は二日続けて「雨天決行」のお祭りに行ったし、わたしも昨日は新宿をウロウロした。というのも、朝電話があって達也(19才・仮名)が「財布落としたから六本木まで来て」というのだ。普段は口もきかないのに、意外とあっさり親を頼るところがかわいいというか。2時間かけて六本木に着いて、せっかくだから何か食べようと、どこかいい店を知っているか聞くと、「六本木は初めてだから知らない」と、ズルーっとくることを言う。じゃあ一体ここで何してたのか? と聞こうとし、根掘り葉掘り尋問調になりそうなのでやめた。

高架下のジメジメした裏通りをしばらく歩き、手ごろな飲食店がなかったのでジョナサンに入った。中は、雨のせいか日曜なのにさえない空気。
達也ってのはつくづくハンバーグの好きな子で、またハンバーグセットを頼んでいる。
わたしは、カツ丼じゃ重いし、マグロ丼みたいなナマもんは怖いし、脂ぎったビーフなんとかは食べたくないしと、帯に短し襷に長しなメニューに長考を重ねた結果、アメリカン・カニ・スパゲティというやつにした。普段ならタンドリーチキン&カレーピラフを頼むところ、そのメニューの写真はいかにも冷えて不味そうだったから、やめた。

達也とは途切れ途切れに話しをし、おじいちゃんが夏に来てほしいとうるさく言っているから、行ってやってくれないかと頼むと、「日曜挟んで3日くらい行けるかもしれないけど厳しい」と、たんたんたんと淡々麺に答える。この後一緒に映画に行かないかと誘うと、「一晩寝てなくて眠いからぜったい寝そう」と、明確に断る言葉は微妙に避けながら答える。

話した会話の数は多くないものの、今ある心の形、のようなものが少し見えたように思う。

さて、わたしはせっかくだから、達也と別れ新宿で下りた。
歌舞伎町にも20年ぶりくらいに足を運んだ。
コマ劇場の看板は松平健と冬のソナタと五木ひろしで、中高年から初老、本格シルバー世代の男女が、チョイ悪どころかなんだかやさぐれた雰囲気で長蛇の列をなしていた。
メインの建物は新しくきれいになっていたが、広場では中年男子たちがゴロゴロ仰向けで寝ていた。
裏通りに入ると、裸のマネキンにH下着を着せ妖しいグッズを飾っている妖しげな店があって、そのまん前に鰻屋があり、店外で実演販売のように炭火で鰻を焼いていた。そこへまたシルバー世代の男女が焼きあがるのを列をなして待っている。うわあ、あんなすごい店の前でこんないたいけなご老人たちがぁ…

まぁぜったいイタイケじゃないだろうけど。そんなでウロウロしていたら目当ての映画(『ゆれる』)を上映している映画館をみつけるのに時間がかかり、みつけたと思ったら次の回まで約1時間あるうえに、すでに「立ち見」になっていたのでもう帰ろうと思い、帰った。またあとで来れたら来たい。

新宿武蔵野館のポスター

 

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