Light&Lust(初回限定盤)

Light&Lust(初回限定盤)

R&R NEWSMAKER 10月号でtetsu氏は、Creature Creatureに参加した件について、「僕はコアなファンだと自分で思っているので、”こういうMorrieさんが見たい” ”こういう楽曲が聴きたい”っていうのを代弁して言っているつもりではあるんだけど、なかなか伝わらない部分もありましたね」「Morrieのソロを聴きたいわけじゃなくて、DEAD ENDのMorrieを聴きたい。俺はそういうつもりで楽曲を書いたんですけども。そういう方向に持って行きたかったんですけども、なかなか大変でした」と、愚痴めいた事を答えていたけれども、そんな事を言われてもこちらには何のことやら分らないし、向こうさんにだって言い分はあるだろうから、双方聞いてみなくては分らない。

それに、製作者サイドの内輪の事情を斟酌してばかりいては、落ち着いて音楽を楽しむことはできない。だからそんな話し、及びCreature Creature(のもとのDEAD END)の80年代中盤あたりから始まっているらしい伝説的な逸話の数々もとりあえずは予備知識を求めないこととする。

それよりも、「でも楽曲提供は初ですよね?」というインタビューアーのひとことに惹かれた。tetsuの曲はたまに行う自分のソロ用を除けば、すべてhydeが歌うことが前提だ。それを他の誰かが歌うというのだから、どんなものになっているのか? シングル3枚同時発売となっていたので、この際アルバムCDを買って聴いてみた。

01. MABOROSHI
02. Red ☆
03. 星憑き
04. パラダイス ☆
05. ゾーン
06. 天醜爛漫
07. 千の闇夜に
08. 風の塔 ☆
09. COSMOS BLACKNESS
10. LIGHTS
11. 春の機械

☆マーク=シングル。
tetsuは「風の塔」を作曲、「パラダイス」をMorrieと作曲、あとはbassとして6以外の全曲でクレジット。ちなみに6のbassは”CRAZY” COOL-JOE。

予備知識はなしで…とはいっても、ちょっとはwikipedia等々で見てしまったので、悪魔的だったり退廃的だったりするのだろうと、ビクビク聴き始めたCDだったけれど、ほとんどそんな感じはしなかった。それより何より、8曲目の「風の塔」が鳴り出すとのけぞるほどにラルクだったのでそれが一番驚いた。特にイントロは「FATE」の、凍りついた針葉樹林の上空を滑空しているPV的イメージを連想させた。ついで落ち着いたやわらかい印象で情景が語られ始め、ついで「こいしいあの世もけだるいまぼろし」、タタターーンとエコーがかかった遠い音が響き、瞬間無音の時間があってダンッと激しい音、ハイ、サビ「カゼニ フキサラワレテ ユクーーー」。

「風の塔」の世界は、「カタストロフ 二度と来はしない」という歌詞から推して、最終的なカタストロフがもう訪れてしまった、何もない、誰もいない世界だ。その世界は、核戦争後の世界ともとれるし、はじめから心のうちにある原風景ともとれるし、待ち望んでいる願望としての世界ともとれる。どれだとしてもその歌い方は中立的で、肯定も否定もしていない。
こんなにも「何もない」ことを歌った歌は初めて聴いたのでけっこう戸惑った。とはいっても、何もない中、ふたつのものだけはある。「おまえ」を希求する心と、風に吹きさらわれ、今消滅しようとしている意識、感覚…

サビは3回繰り返され、「風に吹き攫われてゆく」という歌唱とメロディが絶妙なマッチングで、一大叙事詩かエバンゲリオンかという勢いで、恥ずかしながら慟哭に胸かきむしるくらいハマッてしまった自分だ……

ということで感想が終わると、tetsu(と岡野ハジメさん)だけがすごいと言っているみたいでそれは誤解なので、音楽的なボギャブラリが乏しい関係でやや気がすすまないが、感想を語ってみることにする。

01. MABOROSHI / 「風の塔」ほど大げさではないものの売れ筋のかっこいいメロディをオカルト風のメロディでサンド
02. Red / スピード感アップ。ノド仏がすごい
03. 星憑き / 夜中静かなところで聴いていると子供の声?がかすかに聞こえギクリとする。ホラーな空気から爽やかな空気へ移動する展開がよい。変化に富み聴きだれしない
04. パラダイス / 『Light & Lust』の歌詞はどれも現実を想起させないため、良く言えば抽象的、透明感、純粋、悪く言えば「わけわかんない」ものであるなか、これは比較的わかる気がする。tetsu氏のバックコーラスは「秀逸」もの
05. ゾーン / 夜の街をさまよっているイメージ
06. 天醜爛漫 / 「本当は怖いグリム童話」とかの残酷童話のテーマに合いそう
07. 千の闇夜に / 『Light & Lust』のタイトル通り、光と欲情が同列に恋しがられ歌われる。まるでそれだけが歌う価値のあるもの、とでもいうように
08. 風の塔 / 08以外に耳が慣れるといかにも戦略的に置かれたと感じる曲ではあるが、あくまでも勝ちを取りに行くtetsu曲の強い光が、Morrieという人のシルエットをクッキリと浮かび上がらせたと感じる
09. COSMOS BLACKNESS / 1から8が物足りなくなったらよりDEEPでバリバリ全開なこちらへ
10. LIGHTS / さらに全開
11. 春の機械 / 唯一内面を(やや)吐露したと感じさせる、終章にふさわしい曲

「意味」が牽引するヒット曲に慣れすぎたせいかと思うけども、最初のうちは何を歌っているのか分らなくて、独特の解法でもあるのかとネットで調べたところ、事情に詳しそうなあるblogger氏が「強いて言えば、重たい透明感」と書いていたためまさにその通りだと納得した。全体としていえば何というか、血だらけなのにどこを怪我しているのか分らない人、みたいな。

wikipediaに生年月日が載っているのを見たら変に世代的な共感が生まれてしまって、そう思うと「風の塔」のあの世界は、挙げた三つの可能性の他に、「まぎれもなく今あるこの世界」なんじゃないかと思ったりした。


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