悩めるハハハ

決意の朝に

あれやこれやでパッとしない日々である。
テレビニュースなんか付けようものなら、中学生が次々自殺している。
次々と自殺しているのか、それともマスコミが自殺やいじめの報道を次々とするようになったのか、一体どちらなのか。

そんな中、ゲラゲラ笑ってしまった出来事があって、よりによってそれは、末次郎(中1)が友達4人でカラオケに行ったときに録音した、コクボくんの歌なのだった。

いやーーー、今これを書きながら自分、かなり冷や冷やしているのだけど、それくらい気の小さい自分ではあるのだけど、ともかくゲラゲラ笑ってしまったわけだ。
そのカラオケは女子2名、男子2名の計4名で行ったもので、「おお、我が子も大人に近づいているんだなー、女子も交えてなんてスゴイじゃんか」なんてわたしは無邪気に喜んでいた。
ところがうちの末次郎は、最近買った録音機能も付いているMP3プレーヤーを持参して行って、コクボくんの歌を録音していた。家に帰って末次郎はそれをPCに取り込み、ご丁寧にCD-ROMに焼いていた。

コクボくんが歌ったのはAqua Timezの「決意の朝に」という、中学生の間で絶大な人気を誇っていそうな、内省のきいた複雑なリリックをめくるめくように歌う歌だ。
ひとつの単語を独特に区切る難しい歌で、コクボくんは一生懸命歌うものの、まだ年齢的に声が未完成なのもあるだろう、「辛い時 辛いと言えたらいいのになぁ 僕達は強がって笑う弱虫だ」とヨロヨロした声で歌う。それを回りの女子がクスクス笑っているのも録音されていて、気を悪くしたコクボくんは間奏のところで「へたで悪かったな」とボソっといじけた声で言うもんだから、女子のこらえていた笑いがドッと吹き出した。
次いで間奏が終わって「他人の痛みには無関心 そのくせ自分の事となると不安になって 人間を嫌って 不幸なのは自分だけって思ったり」と入るところ、気持ちを集中し入ったわけだが、声が腰砕けのフニャフニャでますますヨレヨレだったものだから、女子がひっくり返って大爆笑だ。

これにはコクボくんを知らないわたしも可笑しくて可笑しくて笑い転げてしまった。
笑っちゃいけないよ!! こんなに一生懸命歌っているんだから! と教育すべきところ、音痴ってどうしてこうずっこけておかしいのだろう。

しかし焼いたCD-ROMを、コクボくん本人ではなく、ツカヂくんやハマグチくんに配ると聞いたときは、「やめなさい! 著作権はコクボくん本人のものだよ!」と顔を引きつらせつつ釘をさした自分だった。

別にコクボくんのためってわけではない。
何かあった時に「いじめ」と解釈されたらどうするんだよ? という強烈な保身が働いたせいだ。
もっといえば自殺したらどうすんだよ!? とすら思ったのだ。
わたしにはそういう判断が正しいのか分らない。今までも自信なんてあったことはないし、これからもないだろう。
末次郎はひどく不服そうだった。
後日、自殺が中学生のみならず先生にまで及んでいるニュースを見た時に末次郎に感想を求めると、「保護者が過剰反応しすぎなんだよ」とのたまう。なるほど、保護者が過剰反応を起こしそれに対し先生も過剰反応を起こすという、神経同志の連鎖反応的すり減らし合いのようなことは、起きているかもしれない。

それに、過剰反応を起こすことは子供を信じないことでもある。末次郎などはとてもやさしい子で、6年生の時、持病で倒れた時に失禁してしまったクラスメートの男子がいて、それを誰にも気づかれないようにと先生にこっそり耳打ちし対処してもらった、ということがあった。先生はモーレツに感動してしまって、その日車を運転して帰る途中、思い返しては涙があふれ前が見えなくなったそうだ。ああ、心やさしき我が子よ…!!

そんな風にちゃんと友情をはぐくむことができるものを、あれこれ妨害したり干渉したりするのもどうかと、迷う。しかし、もしももしも、何か悪いことが起きていたら…!

そんなであるから、何が正しいのか、あの答えで合っていたのか、どこかに回答集があるものなら確認したいと、切に思ったりする。

 

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