イン・ザ・プール

イン・ザ・プール [DVD]

長いこと観たい観たいと思っていた映画『イン・ザ・プール』観れた。

やっぱケーブルテレビ(11月放映)ってありがたい。
しかし楽しみに観始めたものの、すぐさまうわああ ぎええ とドン引きする暴力シーンが始まり、これ以上観れないと思った。なにせ、黒いピンヒールで魚肉ソーセージを踏んづけ刺したり、ハミガキチュウブを踏んづけ踏んづけしたり、シラタキをビニルの袋ごと踏んづけ刺して、ぶちゅううわあっと中身を飛び散らかすという、陰惨な場面が続くのだ。
わたしのエレクトリカルな神経伝達網と脳内ニューロンはビリビリバリバリとショート寸前になり、皮膚まで粟立ちそうだった。え?そんな物で? と思われるかもしれないが、わたしってきっと感じやすいんだと思う。

というマニア向けな話しはともかく。冒頭部分を過ぎると、意外や意外、お部屋のインテリアもタクシーの窓から見える景色も病院の外観も、そして神経科医伊良部の診察室も、いつかどこかで観たフランス映画のようにステキで、実を言うとオダギリジョーが出て来たあとも、これはかすらないなと早々と結論出してしまったため、あとは背景見て過ごそうなんて考えちゃってたのだ。それがいきなりオモシロ可笑しくなったのは、伊良部先生が田口(オダギリ)の陰茎に顔を近づけ、「チューリップ」なんていうからで。

松尾スズキという人、初めて観たのだけど、なんか声がすごく聞き覚えがあって、どこだっけどこだっけ? と考えて「こち亀」の両津が近いかなぁと。アニメの両津だとラサール石井になってしまうので、ラサール石井ではなく両津。独特にザラザラしてとても演技とは思えない地声感で、大塚愛が「さくらんぼ」歌っているときみたいな。そんなであたたかみとかは無く120%振り切っている感が信じられる感じもするけど、結局好きでも嫌いでもないエリアに着地させる男。なのにその声が耳に付いて離れない。

オダギリジョーは、1976年『ロッキー』でロッキーの恋人を演じたタリア・シャイア並にとても冴えない、妻が浮気しても怒ることもできないノッペリした男をうまく演じていて、映画評論で「冴えない女を演じるのが女優には一番難しい」と読んだことがあるのを思い出した。先述したとおり、映画は背景がとても美しく絵画的なので、言われるままズボンとパンツ降ろして陰茎丸出しで椅子に座っている姿が、ダリが絵筆を取って付け足した何かみたいになっている。が、よく考えたらいくら診察室とはいえ言われるままそんなかっこしているなんて、みっともないし情けない。観終わってからそう気づいた。

市川実和子という人も初めて観たと思う。演じたのは岩村涼美という強迫神経症(という病名を伊良部は付けてないと思うけども本人がそう調べた)のルポライターの女の子で、どうしてこう強迫神経症の女の子は可愛いのだろう。わたしはこんなに可愛い女の子だったことは一度もない。だって根っからズボラさんだし。何度もドアを閉めちゃ戻ってまた開けてガス詮を確認する、という行為を繰り返す彼女。その頭には最悪のシークエンスが次々浮かんで、そのうちカブトムシが凸レンズの役割を果たして発火、炎まみれの飛翔へと至ってしまう。でもって、強迫観念で頭がいっぱいであるがゆえに、余計な自意識がなくて、余計に人を非難することもないし、余計な邪念がなくて可愛いんだ。

ふせえりが出て来たときは、まさかこんなところで再会するとは、久しぶりな感じ。会いたかった、というほどではなく、すっかり忘れていた。しかも出て来たらそれだけで笑えて、戦争を知らない若者ーって感じのヒッピールック、チロリアンテープ、バンダナ、ロングスカート、そして毛糸のベスト。で、さりげに責任感ある発言したり? さりげに懐の大きい優しい人だったり? そしてやはり「どですかでん」。

岩松了。「時効警察」メンバー。というか一番インパクト強かった人。
何者なんでしょうかこの方は。もちろんオンザウェッブだからサーチしたけど、よくわからない。その年齢で男で日本人でそれだけの笑顔を出せるって奇跡くない? やはり結婚しないのがコツなのか。この方が出てくるといつも「奇跡の男」だと思う。「いつまでもそのままのあなたでいて」と色紙に書かれたことぜったいあると思う。

一番『イン・ザ・プール』というタイトルに近い男が大森和雄で、演じるの田辺誠一。大森はストレスの塊で解消方法はプールで1キロ2キロ泳ぐこと。何かのプロジェクトの責任者になってしまって最近ますますストレスだらけになり、プールで泳ぐことかそれが無理なら水に体の一部をひたすかさらに海パンで出社することで、どうにか自分を落ち着けているんだけど、いつも常に水を求めている体感は、ああひょっとしたらいつも自分が味わっているあの体感なの鴨。

田辺誠一はストレスまみれでもいやな感じしなくて、これが宅麻伸とかだったら濃すぎてイヤだったろうなぁ。

そんな感じでわたしも漏電に気をつけよう、と思った。漏電漏電漏電漏電

 

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