帰ってきた時効警察オフィシャル本
- 作者: オダギリジョー,麻生久美子,三木聡,ケラリーノ・サンドロヴィッチ,園子温,麻生学,安見悟朗,豊原功補,岩松了,テレビ朝日『帰ってきた時効警察』スタッフ
- 出版社/メーカー: 太田出版
- 発売日: 2007/06/09
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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帰ってきた時効警察、その最終回を見逃した翌日の昼休み、藁をもつかむ気分で「昨日の帰ってきた時効警察録画してない?してない?してない?」と聞いて回ったところ、大阪府出身で子持ちでバツイチ、最近就職したばかりの推定年齢33才の○山さんに、「え…?時効、刑事?」と聞き返され、「いや似ているけど時効警察」と答え、「見ていないです」と言われ、その他の皆様には軽くシカトされ、ひとり浮きまくっていた推定年齢38才のわたしメだったけれど、ただひとりだけ、推定年齢不明のちょっと太目の大和田さんだけが、「あー!!見た、見た。録画はしていないけど見た見た」とRESポンスしてくれた。
録画していないんじゃほぼ意味はなかったけれど、どんな話だったのか、そしてどんな感想を持ったのかは聞いてみた。大和田さんによると、「ものすごく話のつまらないオトコが元恋人で」「室井滋」「ぎょうざの臭いのする井戸」がキーワードだった。大和田さんは、たまたま今回だけ見たのだけどとても楽しかったとのことで、最終回だったのを残念がっていた。
「あのさ三日月と霧山はどうかなってた?」
「どうかって?」
「だからさ、デートするとか、結婚届を出すとか、コクるとか」
「あーなかったね、そういうのは別に」
試しに聞いてみたけどそういう返事だったので予想していたとはいえ残念だった。それでも、本物を見ていれば、デートするとか、結婚届を出すとか、コクるとかではない、連続して見てきた者にしかピンと来ない大団円があったのでは? と思えたものの、あとの祭りなのだった。
でもってこの本買ったら。全六章中、第一章がオダギリジョーのインタビューで、第二章が麻生久美子のインタビュー。中で麻生さんは、最終回である第九話について、こんなことを言っているのだ。
第九話の、“しもぶくれおじさん”の家での霧山くんとの会話はグっと来ました。時効管理課のみんなを家族にたとえていって、「まぁ、何て言うか、僕と三日月くんが夫婦でさ」というセリフが出た瞬間、現場で泣きそうになっちゃいました。大好きです、あのシーン。(p.033)
あーやっぱりそういうのが!
いやわたしは決して恋愛至上主義とかHAPPY至上主義とか少女漫画ファンのなれの果てとか年甲斐もなく今だにラブコメ好きとか、そういうのではなく多分。行き場なくさまよえる魂を、しかるべき流れに乗せたいのである。バターは冷蔵庫にしまえだし、使ったハサミは元に戻せなのだ。
そんなで、やっぱり帰ってきた時効警察の監督はじめスタッフはちゃんと考えていたんだと思って嬉しくなった。
インタビューは他にも十文字疾風や熊本さんはもちろんのこと、監督やスタッフがゾロゾロ出てくるし、全九話をすべて丁寧に振り返っているし、総武観光案内はあるしで隅々まで楽しめる。中心的に取材をして文を書いているのが轟さんつう人で、途中途中に「探偵トドロキ」なるキャラに扮して作品解説っぽいことをしている記事が、ある意味余計なんだけど、まーそんな角の立つことを言っても仕方ないし、これがなかったら隙のなさすぎる本になってしまうので、いいのかもーなのだ。
しかし第八話が監督・脚本オダギリジョーだったとは最後のエンドロール見るまで知らなかったから、えっ!と驚いたね。第一章を熟読したけども、「第八話は放映前、オダギリさんが監督したトピックスは伏せられていましたね。これは当日、見た人だけが味わえる“サプライズ”を目論まれていたわけですか?」と(轟さんに)聞かれて、「いまの時代、そんな仕掛けをするのに無理があることはよくわかっていました。ネットですぐにバレたりしちゃうわけじゃないですか。(後略)」わたしに限っては何も調べてないので、ホントにサプライズだった。
「探偵トドロキ」によればこの回は、久世光彦の系譜であり久世ドラマに接近しているんだそうで、あと、007・カジノロワイヤルをも想起させちゃう傑作らしいのだ。もっともオダギリ氏本人は「フェデリコ・フェリーニ」とか言っているし、わたしはどれも知らないので、なんとも言えないのだけども。
この回は三日月ちゃんの熱演の印象が強い中、さりげに心にしみたのが、福田(河原さぶ)、八重(加藤治子)、佐伯(松田美由紀)が三人並んで写っている写真で、この本にもちゃん入っているので良かった。それに「さわやかハウス」の福田さんみたいな人ってほんとにいる。底抜けに御人好しで、底抜けにオバカで、頭の毛がベッタリしていて、こっちがどうしていいんだか分らなくなる人。
この本に載っていなかった名場面としては、第三話、まだお色気むんむんになる前の尾沢ミツコ(杉本彩)が、親友(満島ひかり)とふたり、ドテラを着てコタツにくるまり漫画作品を作っているシーン。ここはヒッジョーに壷にはまった。ただし、ここでふたりが作る作品は、作画に苦労のいらない「沈みがち人形」や「ぶくーちゃん人形」の系列ではなくて、♂×♂のいわゆる「やおい」でなくちゃいけないのだ。だって裸の男がふたり絡み合う絵は描くのがものすごく難しいし、ストーリーやネームだって大変だから、ふたりでやるんだもん。といっても、♂×♂でメジャーになるのは難しいなってことになって、オマケで作ったキャラがヒットした、ってことにしてほしかったんだよねぇ。しかし絵的にはドテラの女子ふたりは、すごく良かった。
最終回の他にも、何作かミソこねた回があるから、今度はDVDボックス買うかもなぁ…