『64‐ロクヨン‐』前編をなぜかみた。でもって、ひょんなシーンで涙。

64の登場人物のイラスト
どうせ消されるから自分で描いたシリーズ第二弾。難しい!!似てない!!

映画友のWさんと『レヴェナント』を観た帰り「またなんか観に行こう。何にする?」となった。
そのときにWさんが熱心に観たがったのがこの映画だ。
なんでも「たった七日間しかなかった昭和64年に起きた誘拐事件」をテーマにしているとのこと。

スマホでざっと検索すると、宣伝画像の中央に佐藤浩市さんの苦み走った渋い顔が大きく映っていた。そも佐藤浩市さんという俳優さんが昭和の名残を感じさせる人で、イメージとしては、「父の三國連太郎を超えようとして超えられない苦悩で渋い顔になり、それがそのまま味わいとなった」なのだが、事実かどうかは分からない。なんとなくそういうことで定着しているような気がする。

「七日間しかなかった昭和64年」にどういう意味付けがあるのか謎だったけど、Wさんがあまりに熱心なので観ることにした。あんまりいうとネタバレになるので書けないけど、結論を言えば面白かった。
6月11日に公開の後編を早く観たくてたまらない。

いったい誰が犯人なんだろう。まずもって高校生誘拐の方は永瀬さんでしょう。あの時佐藤浩市演じる三上に「お子さんはいるんですか?」って聞いてたし。しかし昭和64年の誘拐事件の犯人は捕まるのか? モデルになったという実際の誘拐事件は未解決のようだが、映画では犯人捕まってほしいなぁ。

あと気になったのは、記者クラブ。
記者クラブの面々、違う新聞社や雑誌社だろうにライバルじゃなくて連帯しあって警察の広報に掛け合ってて。
「(犯人が)なぜ匿名なんだ」なんて三上に詰め寄ってるけど、そんなの自分で取材すればいいじゃん。
ただ、記者クラブと警察が情報を巡って癒着した関係でないとこの話し、成り立たない。
この関係だから成立しているストーリー。なので、とりあえず文句を胸の中でひっこめながら観た。

でもって三上が、昭和っぽい不器用さで、誘拐事件の被害者の父親にも、そして記者クラブの連中にも通じるかどうか分からない精一杯の誠意で説得を試みるシーンが、最大のみどころの1つだ。
これがカリスマ的な役者さんだと「説得されて当たり前」くらいの雰囲気が出てしまうが、佐藤浩市さんは実に危なっかしかった。
もともと広報官など望んでいたわけではなく、本来は刑事。本来の性質のまま寡黙と高見のうちに引っ返すのではなくて、とても不器用に説得していた。ここがいかにも昭和の人でもあって。というか昭和の最後の年に、20代の若い盛りを迎えていた世代の感覚がよく出てると思う。ま、それ自分の世代ってことなんだけど。笑。

記者クラブ相手の説得のシーンで三上は、交通事故で亡くなったとある老人の逸話を披露し始める。

本来、逸話は無用のものだ。記者が求めたのは犯人の実名であって、死んだ被害者のこまごましたエピソードではない。

けれど、三上には必要な行為だった。記者達の心を動かさなくてはならないから。

その説得の中で語られた被害者老人の逸話の中に「色弱だった」、というのがあって。
そのために皆になじめかった、というのだ。赤が弱かったとも。
その代わり青が好きで、海や空の写真を撮っていたと。

このあたりで涙腺が瓦解した。不意打ちをくらったせいもある。

というか、まわり中すすり泣きがすごかった。となりのWさんの嗚咽を押し殺したグッグッっていう音も。
「色弱」のせいでそうなったのか不明とはいえ。

この被害者老人は直接は話の本題(誘拐事件)に関係あるわけではないから、もう色弱は出てこないだろうけど。

そういうサイドストーリーを内包しつつ、ドラマはいっそう緊迫していく。常にあるのは、警察組織内部での人間同士の心理と心理のぶつかり合いだろう。そこへ、未解決の誘拐事件の闇がいよいよ迫ってくる。
あと、思ったのは綾野剛の演技が面白い。

瑛太はワイルド7と同じじゃん!

警察広報官(三上)に先頭に立ってしつこく詰め寄る、記者クラブの女記者が、実にネチネチしてて面白かった。

県警の本部長の、平安時代の麻呂様みたいな時代錯誤感も面白いし(これが現実なんだとしたら不安で仕方ないが)、なににしろ、続きが観たくなった。また観たらPOSTする。

 

『64‐ロクヨン‐』