『地獄が呼んでいる』が忘れられない
NetFlixの話題ばかり出すのはリスキーである。やつら、儲けすぎてないか? エンタメを独占しすぎてないか? 実は何かたくらんでないか?
そんな疑惑は当然もつ。なんらかのスキャンダルがそろそろ出てくる可能性もある。
でも、今はそんなことはいい。
(NetFlixで見た)『新感染ファイナル・エクスプレス』で熱中させてくれた監督(ヨン・ソンホ氏)が、同じくゾンビ物『新・感染ファイナル・ステージ』の劇場版制作を経て、一段とグレードアップして戻って来た。ネトフリに。その名も『地獄が呼んでいる』Hellbound/지옥 (韓国題は지옥地獄) 冒頭からして怪物三体登場で残虐非道、正直見るのやめようかどうしようか悩んだのであるが、ほぼ同じタイミングで出てきた教祖が異様にカリスマ性がただよっていて、引き込まれざる得なかった。この人、あとで調べたら 『新感染ファイナル・エクスプレス』 のゾンビ熱に浮かされるまま見た『#生きている』の主人公ジュヌだったのだ。 ジュヌはネットゲームにハマッている短髪をブリーチしたマンションの高層階住まいの、イマドキの若者なのであるが、やることなすことがドアにノブが付いているごとくナチュラルすぎて、逆に忘れていた俳優だ。もう一人の主役キム・ヨビン(パク・シネ)なら、そのかっこいいアクションと美貌にすっかり魅せられてすぐさま『シーシュポス』も見て、ほんと、これも大好きなSFドラマとなった。
といった経緯があったのだが、つまりジュヌを演じたユ・アインがガラリと風貌を変え教祖役として登場した。が、全部で6つあるエピソードのすべてに出演しているわけではない。が、前半だけで牽引役として十分すぎる力を発揮した。その演技力は最近ますます評価されているようで、22日から公開の映画『声もなく』でも難役に挑んでいる様子。
といったすぐれた若手俳優の発見といった意味での見どころもありつつ、実は。真の主役は、彼ではなく、あるいは彼女でもなく、この人だったのではないか。と、いたく感じ入らせるラストだった。韓国ドラマの場合、ラストにすごいオチというか結末がくるのだが、さらにダメ押しでももう一発くるのである。あたかも、重量挙げで100キロのバーベル上げて優勝したのにまた108キロ上げて観客の口が開いてしまうくらいの。
これも、かの国境を挟んでの絶え間ない脅威と、同民族でありながら分断されている不幸が影響をおよぼしてのことかどうか、評論家ではないので分からないながら、やはり影響はあるだろう。北の連中も、野蛮でくだらないミサイル飛ばしなんか即刻やめて、こういう創造的な営為で世界を魅了できることを目の当たりにしてほしいものだ。
昔、子ども達と一緒に、『ウルトラマン』『ウルトラセブン』『帰って来たウルトラマン』見るのが好きだった。セブンもかなり大人っぽい内容で、アンヌ隊員の色っぽさなんかもステキだった。と、同時に思っていたのは、「こういう怪獣物で、本気で大人向けのがあればいいのに」ということだった。ウルトラシリーズ、テーマとして深みはあっても、どうしても最後はウルトラマンがやってきて片づけてしまうので、物足りなさは残る。
『地獄が呼んでいる』見てて、それを本気でやってくれたかのような嬉しさもあったのだ。本当に、大人向けの怪獣物を。
見る人によって捉え方は違うかも知れないが、女性ドラマともいえる。通常の女性向けよりも、そんな感じがするのである。
「ネタバレ」になるため、詳しく言えないのがもどかしいが、それゆえの深い感動があるから、『地獄が呼んでいる』の次にはまだ何も見ていない。『浅草キッド』『静かなる海』『ドント・ルック・アップ』を見ると決めているものの。あとマトリックスの監督の『SENSE8』
NetFlixは、次々にドラマや映画を消化させようと、口にスプーンを運んでくれる。
でも、わたしは自分のご飯は自分で食べる。自分のペースで噛み、自分のペースで飲み込む。
誰が何のごちそうで盛り上がっていようと、自分を見失わないこと。それが一番美味しくいただくコツだとわかってきた。