MUCCの新譜『脈拍』聴いた。
「ムックってどうしてるのかな~」と思った。
調べると、今年が彼らの結成20年にあたるみたいで、しかも1月にニューアルバムを出していた。
とても評判のいいアルバムなので、iThunesで全曲を購入、DLした。
せっかくなので、1曲1曲紹介する。アルバム全部を買うお金のない人のために単品購入に際してのオススメに◇マークを入れた。(◇1←オススメ度1番。◇2←オススメ度2番目。◇がついてないのがオススメでないわけではなく目安だ)
◆脈拍 ◇1
アコースティックギターのはかなく切ない旋律にラウドつうのかヘビーメタルのドコドコした野太い重低音が絡まる聴き応えのある曲だ。もちろん、そこに魅力的なボーカルが加わることも記しておきたい。
◆絶体絶命
最初からすっ飛ばして不穏な激しい曲でありつつ、「音楽作りって楽しそうだな」と思わせるイキのいい曲だ。こちらもだいたい25%くらいの割合でドコドコがある。
◆CLASSIC
こちらはドコドコ音0パーセントの、美しくキャッチーなメロディと歌詞だ。
◆KILLEЯ
歌謡曲的要素も入った楽しい曲、と思ったらやはりドコドコが。ドコドコ音は約1分くらいあるかな。やはりこれがないと始まりませんね。
いろんな要素がぶっこまれて急展開していく元気でるやつ
◆BILLY×2 ~Entwines ROCK STARS~ ◇2
この曲は毛色が違ってて、ヘビーメタルというより「ロカビリーロック」?に通じる。
実際、ビリーって言葉の韻を踏んでいくのがミソ。
ストレートにロックな曲で、珍しいくらい生々しい本音が感じられる曲だ。それに、日本のロックの歴史というものを、感じさせる。よくもわるくも、歴史がすでに存在している。
◆りんご ◇2
井上陽水の「氷の世界」だと思うけど、あのメロディが使われているおもしろい曲。
「窓の外ではりんご売り」という元歌からして謎のフレーズから来ているんだろう、りんご。
思えば陽水の時代には未来があった。事実、陽水は『氷の世界』で大スターになったし、かなりの大金持ちになったろうし、今も大御所として君臨してるはずだ。
今の時代、「氷の世界」くらいのクオリティの曲は大勢の人が作ってるけど、誰も陽水のようなスターにはなれそうにない。
このアルバム、「未来」という言葉が多用されているんだけど、この歌では「さよなら未来」という文脈。未来と決別しないといけないってことかな。
複雑な気持ちだ。
◆EMP ◇1
このイントロ好きだ。歌詞で何かを語ったかと思うと例のドンドコで、また語ってドンドコで。
今度カラオケに行ったら「最近悪魔教にハマってます」と宣言して熱唱したい。←難しいので無理だと思うけど
◆故に、摩天楼 (ALBUM MIX) ◇2
一転して明るいパワーに満ちた安心感を与える曲だ。やはり、こういうのもないと、小学生だって聴いているかもしれないし。平凡な印象の曲でも手を抜かずちゃんと作っている。ちゃんと作ることで見えてくる未来があるって思った。
◆秘密
アーバンでアンニュイで、都会派の恋の物語となっている風。ムックのイメージと違うけど、ステキな仕上がりになっている。
◆コミューン ◇3
怪しい秘密結社ぽくてよい。
音が派手で華やかだ。
虹色のかもめが咲いたって‥‥ワンダーランドすぐるっ
「僕らは失敗さ」ってのが強烈でいい。
うん、確かに、失敗失敗。
失敗と思うとなんか納得だ。
◆勿忘草
フォーク調ロックで切ない。
音階?がくくくっと上がっていくところが快感だ。
ボーカルが以前より表現の幅が増した。かなりグッとくる。無敵に近い。
◆シリウス ◇1
アルバム単位で聴くとここらへんで疲れてくるため、むしろ単体で聴いた方がいいかも。その方がこの曲の良さが味わえそう。元気いっぱいの曲なので静かに生きたい人はやめとくとか。4分59秒の長い尺がまた合っている。
◆孵化 ◇2
何かに憑依されたみたいにノリノリで遊んでます。壮大な叙事詩が展開されている。ときどきドコドコと重低音も忘れていない。5分55秒と長い曲なので、これを聴くときはこれだけ、でいいかも。「これから孵化タイム」と宣言してから。
◆ハイデ ◇1
イントロは、アコースティックギターのレトロな音色。
唄がすぐに始まって、「明日 世界は笑顔で輝くでしょうか?」と、遠くから眺めるように、蚊帳の外に置かれた人みたいに言う。
明日、ということは、今日ではない。
世界、ということは、自分ではない。
いってみれば自分はどこにもいない。
このことはあらためて終盤に
「そこにあるのは『自分』と『それ以外』に別れた たった二つの世界」
と唄われる。
なぜそうなってしまったのだろう?
紙飛行機を飛ばしてもどこにも届かないのが世界だから。
世界は彼らの紙飛行機に応えはしない。
世界は紙飛行機を経済に変えて、ぐるぐる回転させ続けるだけだ。
曲と唄は「今夜 流星はブルースを」で最高潮に盛り上がる。
流星が何を意味するか? あえて解釈するなら、憧れのロックスターのような存在だと思う。アルバムの他の曲でも直接歌われているから、その可能性は高い。
憧れ、追いつこうと熱望したスター、もしくはかつての夢の形。
明日 世界は笑顔で輝く/涙で溺れる のかどうか?
このフレーズが、疑問形ではなく予想形に形を変えて、もう一回出てくる。
その時風が、頬を撫でるんだけど、この場面展開が映画みたいに目に浮かんできて魅力がある。
その間に言葉としては「世界」と、今までと同じだけれど、何かが変性して違うものになっている。
で、ハイデー♪
でめさめさ盛り上がる。
ライブとかですんごい合唱で盛り上がりそうだ。何なら少年少女合唱団が参加してモリモリに盛り上げて歌ったり。
思うにハイデとは、風が吹いて、周囲を見渡したら広がっていた荒野のことかと。
ミュージックビデオとインタビューからの先入観も入るけど、多分に故郷でもあるのかと。
決して、憧れたり目指していた場所ではないのに、伸びやかな歌になった、形になった。
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余談
ミュージックビデオのロケ地は、茨城県。彼らの故郷。
遠くに見えるのは筑波山。日本で一番広い平野、関東平野で唯一の山。特徴のある形のため、どこらから望んでいるか角度で分かるのだ。
その場所は、日本の隅っこの縁(へり)と言っていいような場所かも。
もちろんだからって、茨城県以外の人にも聴いてほしいですね。
大ざっぱにいえば、日本全部が縁みたいなものですから。
■参考にしたインタビュー記事: 結成20周年を迎えたMUCCのインタビュー公開!10年分のシングル表題曲&カップリングを再録やリマスタリング!バンドの過去と現在を繋ぐ金字塔的ベスト盤2作品を3/29同時リリース! | 激ロック ニュース
(この記事はダラダラ長すぎたので2017/05/01手直ししました)