eclipse 改 / 茶太 ウサギキノコ

eclipse2.jpg曲目
01. Prologue ~instrumental~
02. eclipse
03. 環
04. Puzzle
05. Re-start
06. Step
07. interval#1 ~instrumental~
08. Always
09. 蝕
10. Melancholia
11. interval#2 ~instrumental~
12. Labyrinth
13. Secret
14. Rain
15. whistle
16. 至


奇妙なことにオトコとは「やたらと自分の好きな音楽をすすめる生き物」なのだけど、必ずしも男性がみなそうなのではないはずで、たまたまわたしの知っている数人の男子がそうなのだろう。だから、「ある種のオトコは」、と狭めて言ってもいいが、ともかく「ある種のオトコ」にうちのダンナと末の息子(14歳)が加わっている。ところが困ったことに、ダンナのすすめる音楽はまるで聴く気が起きない。特にそれがステキな女性の写っているCDだった日には、「どうしてこういうのすすめるの??」と疑問に思えてならない。そのステキさが見かけ上の可憐さだったり、あるいはいかにも才能ありげな雰囲気だったり、その中身はそれぞれだけど、受け取ったまま聴いていないCDがけっこうある。それでも、途中までは聴いたのもあるし、「チボマット」などは何回か聴いたはずだ。その反対に、息子がすすめるCDならば、アーティストが女性だろうが男性だろうが素直に聴こうという気になるのだから不思議だ。なぜならその音楽は、彼が生きる世界を生き生きと輝かせている。彼の生きる糧となり、生きるエネルギーとなり、あるいは楽しい玩具となり相棒となり、日常を彩どっている。
この『eclipse 改』、アーティスト名「茶太さん」もそうで、息子が「超感動するよ!!聴きなよ」と大推薦したCDだ。彼は年に数回、夜中の3時あたりに家を出て行くのであるが、先月の終わりもそうで、いったいどこへ出かけているのかようやく聞き出すことができた。出かける先は、なんと「コミケ」だったのだ。まさか自分の子どもがコミケに行く年齢、というか嗜好に育っているとは、予測もしていなくて意表をつかれた。わたしとて昔はコミケくらい行ったのだよ、という話を聞かせてやると、それは第何回くらいのなのか、とマニアックな問いが帰ってくる。おそらく10回台だったと思う。もっともわたしは、コミケの他にも開かれていた小規模な同人誌販売会の方が好きだったので、コミケにはそう熱心には通っていない。ともかく昨年12月の冬コミにも、彼は朝早くから出かけ、そこで長蛇の列を作りようやく買えたのが『eclipse 改』だったそうだ。
わたしが知っている時代のコミケではCDを売るというケースはない(というかCD自体存在していない)ので、よく分らないが、つまり今は同人誌感覚でCDが作れる、ということなのかと思う。しかしそれにしてもこの『eclipse 改』の完成度は、とても素人が作ったとは思えない。商業的な完成度も高すぎるくらいに感じる。どの曲もゲーム音楽がそうである現実離れした美しさで、そこへ内省的で鋭い歌詞が、アニメ的な甘いボーカルにのっかる。この「茶太さん」(と息子は呼ぶわけであるが)の歌詞世界がまたいじけた毒を持ちつつも、時にひたむきに前向きになる。曲はゲームのようなバーチャル感を貫きながら、どこかでリアルが顔を出しそうなスリル。それは、かくれんぼで「もういいかい?」と呼びかけて返事を待つ瞬間のように。あるいは、「蝕」(eclipse)が起きれば見えてしまう、暗い月のように。とまで言ったら、語りすぎなんだろうか。
アニメともゲームとも縁のないわたしには、この感じはほんの少し不気味なんだけど、彼はイヤホンで聴きながらどこでも気持ちよさげに寝てしまう。