となり町戦争 / 三崎亜紀

「僕」は、周囲のできごとに翻弄されるばかりで、何が願いか希望か欲求かも自分で分っていない半端なヤツで、ピュアーなのだけが取り柄だ。

なのに女性にはなぜかもてて、自分では特に望んでいないのに、女の方が自分からガウンやワンピースをスルリと脱いで、「僕」の服を脱がせていたりする。そしていつの間にか「僕」とつながっていて、「僕」は射精する。

「僕」はだからといって次を求めるわけではないのだが、女がふたたびスルリと衣服を脱げば遠慮はせず、つながって射精する。

なんとも馬鹿らしくてやっていられない男だ。

けど、これが最近の「僕」スタンダードだと認識しているわたしは、特に腹も立たなかった。

おそらく、「僕」はそこそこルックスもいいのだろう。快楽の最低アベレージを確保出来るので、女の方もまぁやっとくか(という理由ではなく「業務」なのだが)とばかり、やっとくのである。しかし、それはあくまで最低アベレージであって、それ以上でもそれ以下でもなく、やってもとくに感動はない。

なんとも馬鹿らしくてやってられない女だ。こういう女きらい。

えーと。好き嫌いではなくて。

役所の書面が出てくるところが、とても生き生きしている。戦争って、なんか楽しーっって感じだ。そういった楽しさと楽しさをつなぐ糊付けの部分が苦労したろうな、と思う。やはり、楽しいことだけ書いていれば作家とは、いえないのだな、と思った。

香西さんっていう女性が出てきて、この人は役所が女体化したような人物で、公務員フェチには受けるかも。
むしろ、これがメインだ。
うん、わたしは好きですよ、この小説。だって最後まで読み切れたし。

でもそういう基準でヨシとするのって、なし崩しで役所主導の戦争を許してしまうのに通じる精神だな、と思い直し、手厳しい批評をしてみた。(つもりなんだよね)

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