都知事選のゆくえ。そして「君が代」

なめても安心 赤ちゃん専用新聞

午後3時頃になって、仕事が一段落してヒマになると、目の見えない木野さんのために新聞を読んで差し上げる。
というのは口実で、テイよくサボりたいってだけではある。
なかなか当日の新聞は入手しづらいため、古新聞置き場の棚の観音扉をすばやく開けて、サササと、でき
るだけ最近の新聞を探す。口実はあっても、やはりサボりの後ろめたさがあるので手早くすませたい。新聞の銘柄は「毎日」のことが多いが、たまに「朝日」をつかんでいる時もある。情報量の点で朝日の方が勝っている気がするものの、それはどっちでもいい。
その後、どっこらしょとベッドに腰掛けておもむろに音読であるが、その前にザザッと目を通して、興味をひきそうな記事をみつける。が、これがなかなか手ごろなのがなく、困ることが多い。一番いいのは、そこそこ穏便な犯罪事件で、「こわいわねー」とか感想を言い合えるやつがいい。あと、安倍首相や閣僚の馬鹿馬鹿しい失言事件も、「ほんとこいつ頭くる!!」と憤懣やる方なく怒りに燃える庶民って感じになれ、ほんとに憤懣ではあるが、多少は気分が晴れていい。
ところで最近木野さんが一番感心をもっているのが都知事選だ。彼女は長い入院生活を送っているわりには、世間への関心を失わず、常日ごろからテレビのニュースにも耳をそばだてているのである。

その彼女に、黒川紀章が石原に対抗して立候補、という意外な情報を最初に読んで聞かせたのは、わたしである。
木野さんは、へーと言って驚いていた。

木野さんは、その後もしきりに都知事選挙関係の記事をせがむのだが、案外と紙面に載っていないことが多い。

それで今、情報収集にサーチしてみたところ、石原都知事「音楽の先生なんだから、君が代を弾いてもらわなきゃ」 などというのを、発見。音楽の先生だからこそ、音感および音楽愛を裏切れず弾けないってのがわからないのか?
けれど、つづく記事を読めば、どこの国でも国歌は忠誠心のリトマス試験紙、愛国心のBTB水溶液なんだぁと、やりきれなく思った。人に何かを試されることがたまらなくいやだ。強制されることも。

ところで木野さんに、「木野さんは、誰が都知事になってほしいの?」と聞くと、

「…………いしはらでいいよ………」

と、小声で答えちゃった。
「あ、あはは…そっかー、今のままがいいものねぇ。そりゃそうだねぇ」
黒川さんでも誰でもいいから、「いしはらでいいよ」とは言わせない、何かいい話を聞かせてやってほしい。

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